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車道は日影が無くて暑い。
しかも少し上っている。
「四万十ウルトラはおおかた下り勾配」
だれが云ったかは知らないが、地元民の感覚では間違いといっても過言ではない。
山沿いの旧道が大半を占めるコースは、小さなアップダウンの連続なのである。
この2車線の直線の車道はトンネルに向かう上り、
自分の中ではここが最初のチェックポイント、
「この37km地点からの車道をちゃんと走れているか・・」
問題ない、調子はいい。
涼しいトンネルを抜けると小野大橋を渡って再び旧道に戻る。
小野の集落は日当りがよくて気持ちがいい。
橋のたもとのエイドで初めて首元に水を掛ける。
予報では最高気温27℃だった。
【40km地点通過】
「4時間33分」。自分にしてはいいペース。
【41.8km、60kmの部との合流地点】
十川大橋は赤い鉄橋。
橋のたもとのエイドからは黄色い声が飛んでいる。
このエイドには十川中学校の生徒達がボランティア参加している。
素朴な学生達の一生懸命な姿に勇気をもらう。
飛脚応援青年を発見。
彼も抽選に漏れた高知市内のランナー。
60kmの部・100kmの部、合流地点で効率よく飛脚メンバーを応援してくれる。
「冷却スプレーありますよ!要りますか!?」
そういえば、今回は全く脚が攣らない。
エイドではオニギリを探す。
しかし、見ただけで手に取れない。
朝からの胸焼けで胃の調子がよくない・・。
固形物を諦めてバナナだけ口に押し込む。
エイドには60kmの部のランナー達が駆け抜けた空気がまだある。
先を急いで出発する。
川の向こうに「道の駅とおわ」が見える。
「十和(とおわ)村」、
昭和地区と十川地区が統合した村。
市町村や学校などの統廃合は今後も続くのだろうか・・。
【42.195km地点】
ご丁寧に立て札があった。
フルマラソン×2、足す・・・やめておこう。
【44km地点、ライダーズイン四万十】
普段はライダー専用の宿泊私設だが、トイレを借りられる。
ここのトイレは100㎞の中で一番贅沢な空間だろう。
各部屋に備え付けのトイレ(前に利用した時は洋式)を貸切り出来る。
【50km地点通過】
まだエイド以外では一度も歩いていない。
6月に脚の中足骨を疲労骨折した。
7月はリハビリウォークからのスタートだった。
9月には月間300kmを走ったが、わずかな練習期間でよく50kmも走れたものだ。
この辺りから高架上を線路が走る。
コンクリートの壁を横にしながらひた走る。
エイドでは脚に掛け水をして冷却する。
大きなポリバケツになみなみと注がれている水。
この水もボランティアの手間が掛かっている。
前日夜10時から当日深夜の2時にかけて水道班が各エイドに給水に走る。
意外と知られてはいないが、ボランティアには「深夜班」があるのだ。
感謝の気持ちを持ちながら掛け水をする。
【53.8km、半家(はげ)沈下橋】
長い山道を走ってきたご褒美のように沈下橋を往復する。
欄干の無い橋の上は大自然を満喫できる癒しスポット。
四万十ウルトラの一番の名所といっていいだろう。
橋の上は業者の写真撮影ポイントになっていて、
ランナー達は笑顔でポーズを決めている。
川のせせらぎ、美味しい空気、開放感、
疲れた脚もこの瞬間だけは生き返る・・。
【半家の峠】
神様は残酷である。
ご褒美の後にちゃんと試練を用意している。
ルンルン気分で沈下橋を渡った後には第2の峠越え。
半家の峠は「みんな歩きなさい!」の号令が聴こえているかのようで、
みんな歩く。
正直、完走だけが目標の一般ランナーには、
歩いても走ってもそんなにタイムのロスにはつながらない。
【半家の落人伝説】
その昔、平家の落人が源氏からの追手から身を隠すために、
「平」の横線を移動させて「半」にして「半家」となった・・、
という言い伝えがある。
どうでもいいことを考えながら峠の上りを歩いていると、
横を歩く年配ランナーが声を掛けてきた。
「この下の線路は中村まで続くんですか?」
「いや~これは中村には行かないですね~、宇和島に行くヤツです」
最近新幹線の格好をした列車が話題になったJR予土線、
噂の新幹線を見られたランナーはいるのだろうか・・。
半家の峠はすぐに頂上を迎え、下りに入る。
この下りは傾斜がかなりキツイ。
堂ヶ森で痛かった足の爪が悲鳴をあげる。
結局、半家の峠はほとんどを歩いた。
【56.5km、第2関門】
歩きで時間を使ったが、まだ関門タイムを1時間以上残している。
エイドで給水してトボトボと走り出す。
山際は日影が多くて随分と助かる。
【60km地点通過】
「7時間40分」、黄色信号が点いた。
以前の完走時の記録よりも30分も遅れている。
疲れも隠せなくなり、
間もなく現れるレストステーション「カヌー館」が待ち遠しくなる。
レースは後半に入る・・。
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