感動する本に出合いました。
レイチェル・カーソンは、人間の環境破壊(農薬など化学物質による)に警告を発して世界的ロングセラーとなった「沈黙の春」の女性作家であり生物学者です。
農薬を使いすぎて、春になっても鳥の声もしない沈黙の春・・・
相変わらず環境破壊は進んで、すでに野鳥の数は激減しています。おそらく数年後には地球のデリケートな均衡は保てなくなり、地球環境がどっと崩れるのではないかさえと言われています。
「センス・オブ・ワンダー」は「沈黙の春」を書き終えた(1962年)後に書かれた作品で、その時彼女はすでにガンに侵されていて2年後に亡くなられ、彼女の最後の作品です。
写真の文庫本は、今年(2021年9月)に発刊されました。この中の彼女の文章は、大きめの字の文庫本サイズで70数ページにしかすぎません。しかしその中に、あふれるほどたくさんの「センス・オブ・ワンダー」が素直で美しく優しい言葉で表されているのです。
「センス・オブ・ワンダー」とは「神秘さや不思議さに目を見はる感性」と訳されています。この感性は子供にはあるが年齢とともに失われる。だがセンスオブワンダーの記憶は、消えることがなく、
「やがて大人になるとやってくる倦怠感と幻滅、私たちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです。」
だから子供たちに、自然に接する機会をたくさん与えてほしいと訴えています。
作品の中のあるセンスオブワンダーを抜粋します
「風のないおだやかな十月の夜、車の音が届かない静かな場所に子供たちをつれていき、じっとして頭上にひろがっている暗い空の高みに意識を集中させて、耳を澄ましてみましょう。やがて、あなたの耳はかすかな音をとらえます。鋭いチッチッという音や、シュッシュッというすれ合うような音、鳥の低い鳴き声です。
それは広い空に散って飛びながら、なかま同士がはぐれてしまわないようによびかわす渡り鳥の声なのです。
わたしは、その声をきくたびに、さまざまな気持ちのいりまじった感動の波におそわれずにはいられません。わたしは、彼らの長い旅路の孤独を思い、自分の意思ではどうにもならない大きな力に支配され導かれている鳥たちに、たまらないいとおしさを感じます。また、人間の知識ではいまだに説明できない方角や道すじを知る本能に対して、湧きあがる驚異の気持ちを押さえることができません。」