そのスリ集団はお見事でした。
が、被害にあった私のダンナもスリにとってみれば理想のタイプでした。
なぜなら、両手に買い物の紙袋をさげ、皮のコートの前は開いていて、
しかも内ポケットに財布を入れていたから。
コンドッティー通り、忘れもしない MAX・Coの向かいあたりの歩道を
歩いていたときでした。
歩道脇にあったバイクにすわっていたジーンズの女の子が
手に持っていた新聞をダンナの目の前に突き出したのです。
にぶい二人は、新聞売りかと思い「ノーサンキュー」と言ったのですが、
その言葉が終わらないうちに、どこからきたのか 小さな女の子たちが
ダンナを囲み、ぐるぐる回りひっぱり始めたのです。
その間、1分もたっていないでしょうが、
私には今でもスローモーションでそのときの様子を思い出すことができます。
私はお店に入ろうとダンナをひっぱり、彼は女の子たちを追い払おうともがき、
その間女の子たちは彼にくっついて何かしているのです。
と、突然 イタリア人の男性が大声をあげると、その子たちはあっという間に
消えてしまいました。
ただひとり、紫色の毛糸の帽子の子だけが、いつまでもつきまとい、
投げキッスをしてダンナが追い払うとやっと立ち去りました。
物乞いだと思っていたダンナ。
「ひょっとして、スリとちがう?財布とられてない?」
と、聞く私。
ひょっとして、どころか 立派な、古典的なスリの手口でした。
内ポケットに入っていたはずの財布がありません。
クレジットカードも入っていたし、えらいことになりました。
明日へ続く。