60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

デフレ

2009年12月11日 09時02分42秒 | Weblog
池袋東口駅前、明治通りに面した居酒屋は大勢のアルバイトがメニューを持って店の
前に立ち,、客引きをしている。料理270円均一、どの店も同じような値引き合戦である。
会社から帰り、自宅のある駅に降り立つと、首から看板をぶら下げた居酒屋のアルバイトが
やはり大声で客引きをしている。「ビールも半額で~す。料理は全品30%オフで~す!」
駅前には大手の居酒屋チェーンが2店ある。どちらかが、あるいは両店とも毎日立っている。
客引きが始まったのは今年の夏前ぐらいからだろう。1店が初めてすぐにもう1店が追従した。
もうひとつ、駅に隣接するインストアベーカリー、値引き開始は何時からかは分はからないが、
夕方はいつも「全品50%OFF」の立て看板が立っている。これも最近始めたことである。

先週土曜日映画を見に行って、映画館を出ると雨が降り始めていた。雨宿りで駅前の
西友に入ると、レジのところにビニール傘が出してあり、150円のプライスが付いている。
コンビニで350円と同程度の商品である。「安い傘が何本も家に溜まるが、まあ良いか」
結局安さに負けて買ってしまう。先般のニュースで西友で32型のテレビが39,800円で
売り出したとか。しかも同商品は「エコポイント」対象商品として、1万2000ポイントが
付与される。このため実質2万7800円で購入できる。またドンキホーテのジーンズが
690円とか。.280円弁当が出回り始めたとか。ここ何ヶ月かで、世の中底が抜けたような
安売り合戦のオンパレードである。

昨年のリーマンショックからの世界不況の波が我々の目にも見えるようになったのだろう。
企業業績の悪化、失業、買い控え、安売り、さらなる企業の業績悪化とデフレスパイラル
という現象が起こったのか、経済全体が収縮に向かっているといわれるようになってきた。
昨年から矢継ぎ早の景気対策の手が打たれ、金がつぎ込まれる。先日のニュースでは
来年度予算は国債を過去最大の53.5兆円発行し、経済対策に7.2兆円の財政
支出するとあった。税収(36・9兆円)見込みをはるかに超える国債という借金をして
までこのような経済対策をする必要があるのか、疑問を感じてしまうのである。

確かにリーマンショックが発端になってドミノ倒しのように世界中が影響を受けることになる。
しかしそれは今までがバブルで、正常な経済活動から逸脱していたから起こったのであろう。
世の中、何年も前から人を取り巻く環境は変わっていたのに、経済活動そのものが、身の丈に
合っていなかったのではないだろうか、だからバブルは遅かれ早かれ弾けたのである。
それをお金をつぎ込み、元のようにもどそうとするのは間違いのように思うのである。

昨年のリーマンショックからクルマが売れなくなった。それはすでに予兆は有ったのである。
先日新聞のコラムに「若者はなぜ車を買わなくなったのか?」のアンケートが載っていた。
「デートにクルマはいらない」「クルマに金をかける男はダサい」「事故の責任を負うのは嫌」
「税金や駐車場などいくらかかるか分からないのは不安」等々若者の意識は変化している。
車に対する意識が変化する中、エコカー減税をまた半年延ばす必要があるのだろうか?
事業仕訳で科学技術予算を削ってまで、高速道路を無料化する必要性があるのだろうか?
自動車産業は裾野が広く基幹産業という理由なのだろが、しかし温暖化問題の意識の
高まりの中でいずれ自動車産業は大きく変化を求められ、次第に淘汰されるのであろう。
そんな産業のテコ入れをするのは少し方向が違うように思うのである。
小さな島国の日本、車で走り回る世の中より、車なしで生活できる世の中を目指すべき
なのではないだろうかと思う。電気バスの路線網の充実、路面電車の復活、自転車専用
道路の充実、そんなお金の使い方の方が、国が目指す方向が国民に分かりやすいし、
理解も得やすいと思うのだが、どうだろう。

もう、大きな駐車場の大型スーパーはいらない。ブランド品をこれ見よがしに売る百貨店も
時代のニーズに合わない。安いだけのありきたりのメニューしかないレストランも居酒屋も立ち
ゆかなくなるかも知れない。今の企業活動の延長線上に将来に続く道はないようである。
多分、ますますデフレの現象は激しくなっていくように思う。これは今までと違って、社会の
仕組や価値観が変わって行き、大きくダウンサイジングするために必要不可欠な現象では
ないだろうか。地球温暖化にブレーキをかけるには消費社会、使い捨て、物への執着から
我々の意識は、文化的な活動、精神的な充実など、物の豊かさより、精神的な豊かさ
に方向転換すべきなのだろうと思う。

今の若者を見ていると、我々世代と違って慎ましやかに生活し、どちらかといえば精神的な
充実を求めているように思う。彼らにとってバブリーな生活は望んでいないのである。
だから、今の社会の方向にジレンマを感じ、絶望し、結婚しない、子供を産まない、などの
社会現象にも通じるようにも思うのである。そんな状況の中いまだに方向を見いだせず、
バブルに未練を残しているのはバブル期に育った40代以降の人々が多いように思ってしまう。

地球温暖化が68億人の人間の消費活動や生産活動に起因することは間違いないだろう。
鳩山政権が温室効果ガスの25%削減を目標に掲げたは評価できる。しかしそれならエコカー
減税や、高速道路無料化はやるべきでなく。世界の模範となるような社会インフラを大胆に
変更すべきだと思うのである。そうすれば今の若者にも展望が開け、将来に対し意欲を持てる
ようにも思うのである。700兆円に及ぶ大量の国債という借金や、地球温暖化の危機を
後世の人達に残さないためにも、我々自身が自分のエゴを抑えなければいけない時であろう。
自分でも、何か高邁な理想論を言っているように思うが、歳をとってきて欲がなくなってくると、
次第にこういう考え方になっていくようである。