60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

離婚理由

2012年11月22日 17時22分36秒 | Weblog
 年末の喪中葉書に混じって、「Restart! single life again.」と書いた葉書が送られてきた。文面には「突然ではありますが、この度シングル生活に舞い戻ってきました! すでに新たな人生を始めておりますが、今後も変わらぬおつきあいを頂ければ幸いです」、と言うものである。7~8年前に彼女の結婚式に出席し、それ以来毎年の年賀状は欠かしたことはない。たぶん離婚してから自分宛の年賀状が元の夫に届くのを避けたかったから葉書を出したのであろう。葉書を手にしたとき、まず「何があったのだろう?」と考えてしまう。彼女はどちらかといえば、大人しく無口で耐えるタイプの女性であった。だから夫の浮気?、それとも暴力?、夫は多少マザコンのタイプだったから、そのあたりに耐えられなかったのだろうか?、思いつく原因はどうしても夫の側の問題を考えてしまう。

 葉書をもらったからには返事をしなければと思い、「何があったのでしょう?残念です。落ち着いて心境でも話せるようになったら一度お会いしましょう」、そんな内容でメールを送った。しばらくして返信がある。「別居したのは昨年の秋、紆余曲折あって離婚届けを出したのは今年の夏、だからすでに1年経過していて、気持ちとしては吹っ切れています」と言う内容であった。もう一年も経過しているのなら経緯も話せるだろう。そう思って先日彼女に会ってきた。彼女が結婚した年の年末に、忘年会でみんなが集まったことがある。多分その時以来の再会であった。だいぶ時間は経っているが、雰囲気は当時とはあまり変わっていない。それは子供がいないからかも知れない。お互いの近況を話してから、やはり話題は離婚原因の話になる。以下彼女が喋った離婚理由を要約して書いてみる。

 付き合い始めて5年目に結婚した。結婚してから今年で8年である。結婚した当初は、お互いの生活習慣や夫の癖が気になってストレスを感じていた。しかしそれも時間が経つにしたがって許容できるようになり、その後は結婚生活も快適に思えるようになっていった。3年前にマンションも購入し、自分も週3~4日のパートタイマーをこなして家計を助けるようにしていた。それと自分が妊娠しづらい体質と分かって、不妊治療に通い始めるようになったのもその頃である。そんな生活が6年目になった頃からだろうか、夫の性格である「優柔不断さや頼りなさ」が次第に鼻についてくるようになってくる。そしてそんな自分の気持ちが日を追うごとに膨れ上がっていった。「私はこのままこの人と一生暮らすのであろうか」、そう思えば思うほど耐えられない事のように思えてくる。不妊治療もやめてしまい、とうとう自分の方から離婚を言い出した。当然夫は晴天の霹靂である。夫に「なぜ?」と問われても、自分の気持ちを上手く伝えることができず、不毛な話し合いと言い合いが続いて行く。そんなこともイヤになってしまい、昨年の秋にとうとう家を出て実家に帰る。

 その後も話し合いは続いた。相手の親も出てきて、「あなたのためにマンションも買ったのではないか、どうするのだ!」とか、自分の父にも、「おたくの娘はどういう考えなのだ!」と抗議が続く、しかし父親は「これは2人の問題ですから」と取り合わなかった。彼女は自分でも自覚しているほど頑固な性格である。一度こうだと言い出すと後には引かない。夫のほうもそれが分かっているのだろう。時間の経過と共に言い合いもなくなり、今年の夏に離婚届に印を付いてくれたそうである。最後に荷物を引き取りに行ったときも穏やかに別れることが出来たという。

 この話を聞いて、自分の中では「?」マークが7~8個並ぶような不可解さである。付き合って5年、結婚して7年、合計12年もお互いを知っているわけである。それなのに夫に不満が出できたから別れるというのであれば、夫のほうこそ狐につままれたようで全くの被害者ではないか。「好きな人が出来た」というのであればまだ分かりやすい。しかしそれは絶対無いという(彼女の性格から嘘ではないと思う)。夫が浮気しているとか、酒癖が悪いとか、暴力を振るうとか、ある程度理解できることが理由であれば納得が行く。しかし彼女の言う理由が本当に離婚理由なら、多分世の中の多くの男性は理解できないのではないだろうかと思ってしまう。

 彼女から話を聞いて別れた後も、自分に納得できる理由付けを考えてしまう。会話の中で彼女が話した夫の性格に関することを思い出し、拾い出してみる。「何か相談されて私の考えを伝えたとする。しかしそれには何の反応も示さない。しかし同じ相談を自分の親にして私と同じ答えが返ったら、それは素直に聞き入れる」、「彼は能動的なタイプではない。食事に行くのも旅行をするのも、私が動かないと彼のほうからは絶対に動かない」、「無口で無表情、喜怒哀楽をほとんど顔に出さない」、「特にこれといった決定的な理由があるわけでなく、小さな不満が積もり積もって破綻してしまった」、そんなことを言っていたように思う。こういうことが要因なら、程度の差はあるだろうが私も基本的には同じであろう。そして仕事に疲れた多くのサラリーマン男性もまた同じようなものだと思うのである。

 「子供がいたら別れたのだろうか?」と聞いてみた。「その場合は別れていなかったかもしれない」と彼女は答える。と言うことは、彼女は子育てという目的が有れば耐えられた結婚生活が、それが無いために夫との関係に重きをおいてしまった。一方夫の方は仕事に目が向き、ある程度長くなった夫婦関係には気を使わなくなる。そんな不満が積もり積もってやがて臨界点に達してしまった。当然彼女だって感情のままに家を飛び出したわけではないだろう。夫との生活を続けた場合と、別れた後とを天秤にかけたはずである。そのとき今までの生活を続けるより、どうなるか分からない未知の方に天秤が傾いたのではないだろうか。そして傾いた天秤は元には戻らなくなった。今はそんな風に考え、とりあえずの理由付けしてみた。しかしこれが彼女の本当の心境かどうかは分からない。彼女は今実家で父親と2人(母親は9年前に亡くなった)で暮らし、都心の調剤薬局の事務のパートとして働いている。これは彼女にとって居心地のいい場所なのかもしれない。そうだとすると、もう再婚は難しいようにも思ってしまうのである。


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