キリマンジャロ登山四日目
朝ホロンボ・ハット(標高3720m)出発してしばらく行くと「ラスト・ウォーター」と書かれた看板があり、此処がマラングルート最後の水場となる。これから上は全く植物の無い砂漠のような荒野が続く。
最後の水場
その中を白い踏み跡が一直線に伸びている。右手に見えるマウエンジ峰(5194m)は、標高こそキボ峰に劣るものの剣を突き立てたような山容が素晴らしい。
キボ・ハットへ向け伸びる登山道
荒涼とした風景の中を約4時間半歩いて最終キャンプ地のキボ・ハット(標高4730m)に着いた。2棟の建物があり室内は鉄製の2段ベッドが備えられ軍隊の訓練所にいるようだ。
時間があったので、高度順応を兼ねてキャンプ地の少し上まで登ってみる。流石にこの標高では空気の薄さが良く判り少しの運動で息切れする。宿舎に戻ると早めに食事を済ます。食欲は無くビールを飲もうという気にならない。
キボ・ハットを見下ろす。
明日の出発が早いので、食後すぐにベッドにもぐるが中々寝付けない。空気の薄さが影響しているのだろう。
キリマンジャロ登山五日目
深夜12時に起床、簡単な食事を済ますとキャンプ地を後にする。屋外は凄い寒気で身体が身震いする。空を見上げると満天の星、あれが南十字星と教えられたが、あまりにも星が多過ぎてよく判らない。
キャンプ地から最初の目標キボ峰のギリマンズ・ピークまでは岩稜の急登が続き、やっと登山をしているという実感が湧く。ちょうど富士山の7~8合目を登っているような感じだ。
危険な場所は無く恐いのは高山病だけ、ツアー参加の女性が2度続けて転び、それを見たガイドは「登りたい。」という彼女を強制的下山させた。高山病で命を落とす人がけっこういるらしい。
マウエンジ峰の左から御来光
やがて東の空が白み、マウエンジ峰の奥から真っ赤な太陽が現れ我々の冷え切った身体を暖めてくれる。大自然の荘厳な瞬間だ。ピーク間近になって妻の歩みが急速に落ちた。高山病の兆候がでたようだ。何とか騙し騙し登ってキリマンジャロ山火口外縁のギルマンズ・ピーク(5685m)に到着した。
ギルマンズ・ピーク
ここまで登ればキリマンジャロに登頂したという証明書が貰える。ツアー参加者の大半は、此処を最後にキボ・ハットへ向け下山して行った。妻も限界のようで、一緒に降っていった。
残る人は火口外縁を辿って最高地点のウフルピークを目指し、思い思いのペースで進んで行く。この高さでは意識して呼吸しないと息が途切れる。私は実に体調が良く先陣を切ってウフルピーク(5895m)に到着した。
ウフルピークへ向かう途中で見える氷河
キリマンジャロ最高地点、ウフル・ピーク
山頂の氷河
周囲に氷河が横たわる山頂からの展望は絶景の一言、今までの苦労が一気に報われた。正に天上の世界にいるような至福の一時だ。記念の写真を撮り終えると下山を開始する。すれ違う人にエールを送りながら足を速める。
登りに苦労したギルマンズピークからキボ・ハットへの急坂も、富士山の砂走りを降るように一直線に降って行く。同行したガイドが「ユー・アー・ストロング」と褒めてくれた。
気懸りだった妻の体調も、キボ・ハットで再会したら元気そうだったので一安心した。今日はこのまま一気にホロンボ・ハットまで下山する。長時間の行動に最後の方は流石に脚が重い。ホロンボ・ハットの小屋が見えた時はホッとした。
夕食を終え登頂の余韻に酔いながら下界を見下ろすと、広範囲なエリアで山火事が発生している。そこには明日我々が降る道がある。下山できるのだろうかと不安になってきた。
キリマンジャロ登山六日目
ホロンバ・ハットを出発し、しばらく降ると昨日目撃した山火事現場に着いた。周囲はまだ火の手が上がっており、青白い煙が辺りに充満している。我々は湿らせたタオルを口に当て、山火事の中に通じる道を一気に駆け抜けて、全員安全地帯まで無事に脱する事ができた。
山火事現場
一時はどうなる事かと思ったが、過ぎてみればこれも得難い体験である。その後も緩やかに続く長い道をひたすら下り、登りで泊ったマンダラ・ハットも通過して、足取りも軽く登山口のマラングゲートに戻ってきた。
その後、登頂した人は登頂証明書を授与される。妻はギルマンズピーク登頂、私はウフルピーク登頂と書かれた紙をそれぞれに貰う。登頂の証なので笑顔がこぼれる。
登頂証明書をもらう妻
そして行動を共にしたガイドやポーター達とのお別れ式、彼らはキリマンジャロを称える現地の歌を歌い、我々日本人も「さくら、さくら」と日本の歌を歌って一人1人握手した後、解散となった。
我々は地元の中心都市アルーシャまでバスで移動しホテルに泊る。久しぶりにバスタブで垢を落とし豪華なディナーに舌鼓をうった。明日から楽しみにしていたイゴロ・ンゴロやセレンゲッティーのサファリが始まるのだが、それは次回のブログで載せるつもりです。