1月27日(火)
遺跡発掘の作業中に「皆さんちょっと来てください。」と調査員のHさんから声がかかった。周囲の作業員が集まると「これも遺物ですよ。」と手を掲げた。直径1センチにも満たない青く丸い小石のようなものが彼の掌にあった。
遺物と言えば土器や埴輪等ある程度大きな物を想像していた私は「ヘェーこんな小さな物もあるのか。」と認識を新たにした。これを発見したのは超ヴェテラン作業員のYさんだ。私だったらまず間違いなく見逃して、土くれと一緒に廃棄していただろう。「流石はYさん」と現場のオーソリティーに周囲から賞賛の声が飛び交った。
「見逃す」という言葉で有る出来事を思い出す。12年前に私は胃ガンの手術を受け、それが成功したから今も生存しているのだが、実は胃カメラで胃ガンが見つかった4ケ月前に埼玉医大病院の人間ドックを受検していた。
受検場所はホテルのように綺麗で設備も充実し、結果を説明してくれた医師もにこやかで優しく丁寧に対応してくれた。その時のバリウム検査では「胃=異常無し」と書かれていた。
しかし私はその数か月後に胃ガンの手術を受けた。あのにこやかな医師は、私の胃ガンを見逃していたのだ。その後偶然受けた胃カメラで発見されたからよかったものの、彼の見逃しのせいでヘタしたらあの世は旅立っていたかも知れないと思うと背筋が寒くなる。