monologue
夜明けに向けて
 



 最近、ライブドア事件による株式市場の見直しに伴って
童謡「待ちぼうけ」がブームになっている。口の端を歪めながら歌っている。
この歌詞には北原白秋が込めた以上の深い意図があった。

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 待ちぼうけ
北原 白秋: 山田 耕筰: 童謡

 待ちぼうけ 待ちぼうけ
 ある日 せっせこ 野良かせぎ
 そこへ兎が飛んで出て
 ころり ころげた
 木のねっこ


    待ちぼうけ 待ちぼうけ
     しめた これから寝て待とうか
     待てば獲ものは駆けて来る
     兎ぶつかれ
     木のねっこ


        待ちぼうけ 待ちぼうけ
         昨日鍬とり 畑仕事
         今日は頬づえ 日向ぼこ
         うまい伐り株
         木のねっこ


    待ちぼうけ 待ちぼうけ
     今日は今日はで待ちぼうけ
     明日は明日で森のそと
     兎待ち待ち
     木のねっこ


待ちぼうけ 待ちぼうけ
 もとは涼しい黍畑
 今は荒野の箒草
 寒い北風
 木のねっこ

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 白秋がこの詞の想を得たのは韓非子「五蠹(ごこ)」に載っている「守株(しゅしゅ) 」という逸話であった。 以下に原文と読み下し文を示しておく。 

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 守株
宋人有耕田者。
田中有株。
兔走触株、折頸而死。
因釈其耒而守株 、冀復得兔。
兔不可復得、而身為宋国笑。
今欲以先王之政、治当世之民、皆守株之類也 。


読み下し文

宋人に田を耕す者有り。田中に株有り。兎走りて株に触れ、頚を折りて死す。
因りて其の耡を釈てて株を守り、復た兔を得んと翼(ねが)う。
兔は復た得べからずして、身は宋国の笑いと為れり。
今、先王之政(まつりごと)を以って、当世之民を治めんと欲っするは、
皆之株(くいぜ)を守るの類(たぐい)也 。

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韓非はこの話しによって
前の王のやり方ばかり真似ていないで時代に合う政治をしなければいけないと貴族達に説いたというが
それにとどまらず現代の株式市場、金融界のことを予見して作った逸話のように思える。
ITバブル、株の誤発注などによる、
空騒ぎブームが終わって童謡「待ちぼうけ」を人々が歌う時、その胸に去来するものはなんだろう。
「今は荒野の箒草
 寒い北風
 木のねっこ」
fumio







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