一昨日の「SONG TO SOUL」でオーティス・レディング(Otis Redding)の「ドック・オブ・ザ・ベイ」を再放送していた。
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのレコード会社「モータウン」がデトロイトの自動車生産ラインのように音楽を生産するのに対して 「スタックス」というレコード会社は中小企業の手作りの味があってソウルの色が濃かった。そのスタックスレコードのバックミュージシャンは「green onions」 のヒットで知られる白人黒人混成バンド「Booker T & the MG's」が務めた。サム・アンド・ディヴ、ウィルソン・ピケットなどのバックで聞けるソウルフルな伴奏はかれらである。
その日、スタックスレーベルの誇るセッショングループ「Booker T & the MG's」のオルガニスト、ブッカー・T・ジョーンズはスタジオに他のバンドのマイクや楽器類を般入中のオーティスという名の身体のでかい運転手らしき男に「レコード会社のオーディションがあるので伴奏オルガンを弾いてよ」と頼まれた 。ギタリストでありプロデューサーであるスティーヴ・クロッパーはマイクなんかはスタジオにあるので持ち込まなくていい、と言った。オーティスが歌い始めると突然世界が変わった。ブッカー・Tは心底感動して伴奏中ただ聴き惚れてしまった。そして"I felt that I was involved something good and something significant "「おれはなにかとんでもない意義深いことに遭遇していると感じたんだ」と振り返る。スティーヴ・クロッパーは鳥肌が立って他のメンバーを呼んで聴かせた。その曲は「ディーズ・アームズ・オブ・マイン」といいその男オーティス・レディングのデビュー曲になった。その後オーティス・レディングはサザーンソウルの体現者として登場して聴く者すべての魂を震わせることになった。
オーティス・レディングはカバーを好み、「今度のローリングストーンズの新曲はオーティス・レディングの歌のパクリだ」とファンたちが噂したほどオーティスのカバーがあまりに早かった「サティスファクション」をオーティスは「サティスファッション」と発音しているとオーティスのために「サティスファクション」の歌詞をレコードから聴きとって書いてやったスティーヴ・クロッパーが言っていたのが面白かった。「サティスファクション」のクが発音しにくかったのかも。
ところがオーティスは自身の曲「ドック・オブ・ザ・ベイ」が全米1位に輝くのを見ることなく飛行機事故によりこの世を去る。不思議なことにこの時代に現れた不世出の天才たち、ジミ・ヘドリックス。ジャニス・ジョップリン、ジム・モリソン、オーティス・レディングらはわずか数年の寿命のフィラメントのようにその期間だけ激しくきらめき光芒を放つとあっという間に燃え尽きて向こうの世界に消えてしまうのであった。
fumio
| Trackback ( 0 )
|