「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(3)

2006年11月06日 21時47分18秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/41940371.html からの続き)

 美由とシンシアが 車で訪問介護の巡回中、日が暮れて 雨が振りだす。

 通りかかった公園の暗がりで、美由は 男が首を吊ろうとしているのを 見つける。

 慌てて車を飛び出し、男を止める美由。

 男は 野々山啓輔といった。

 シンシアは 啓輔を事務所へ連れて行く。
 

 SCSの事務所。

 美由とシンシアが 啓輔を介抱している。

 濡れた服を着替えさせ、熱いココアを注いで もてなす。

 啓輔は ココアの暖かさと 美由たちの優しさが 身に沁み、涙がこぼれる。

 久しく触れたことのない、人の心だった。

 啓輔は 事情を話す。
 

 4ヵ月前、啓輔は リストラに合って失業した。

 啓輔の妻は、元々 仕事で家庭を省みなかった啓輔に 嫌気がさしており、

 職を失って 脱け殻のようになった啓輔に 見切りをつけ、

 娘を連れて 家を出て行ってしまった。

 啓輔が 途方に暮れていた矢先、母親の道子が 脳出血で倒れ、

 左半身麻痺になってしまう。

 まだらぼけが出て、徘徊や失禁を繰り返し、

 訳の分からないことを言って 野々山を困らせる。

 啓輔は これから一体どうすればいいのか、目の前が真っ暗になる。

 こんなはずではなかった、 自分の人生は……。

 4ヶ月間、道子の介護に疲れ果て、

 啓輔は もはや 生きていく希望を失ってしまう。

 そして 首を吊ろうとしたところを 美由たちに救われたのだった。

「明けない夜はない なんてウソだ」

 と嘆く啓輔。

 シンシアは

「暮れない昼も ありませんよね」

 と語りかける。

 親身になって聞いてくれる 美由とシンシアに、

 啓輔は 心を許していく。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42015032.html
 
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