「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(9)

2006年11月12日 14時03分45秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42148337.html からの続き)

 ある日の 野々山宅。

 道子が下半身裸で、おむつを抱えて 庭をウロウロしている。

 啓輔は 頭に血が上るが、

「お母さんのすることには 必ず意味がある」

 という 美由の言葉を思い出し、一息ついて考える。

 道子は 粗相(そそう)をして、それを知られたくなくて、

 おむつを隠そうと しているのではないか?

 道子にもプライドがある。

 啓輔は 道子の腰を 自分の上着で被って、道子に耳打ちする。

「年を取れば、たまには チョロッと漏れるくらい 誰でもあるよ。

 実はな、内緒だぞ、俺も ときどき漏らすんだ」

 道子は

「なんだ、お前もか」

 と安心する。

 啓輔は 道子を風呂に入れて 体を洗う。

 細くなった道子の背中を 流していると、道子は

「ありがとう……」

 と呟いて 微笑みを見せる。

 驚く啓輔。

 道子が こんな豊かな表情を見せたのは、発病してから 初めてのことだ。

 啓輔の態度が 変わることによって、道子の気持ちも落ち着き、

 いわゆる痴呆の “問題行動” が少なくなった。

 “問題行動” を作っていたのは 道子ではなく、実は 啓輔のほうだった。

 道子は困惑して 心と行動が 乱れていただけだったのだ。

 道子の気持ちを理解せず、どんなに傷つけていたか。

 道子に深く詫びる 啓輔。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42225841.html
 
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