「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(10)

2006年11月13日 21時55分29秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42179306.html からの続き)

 野々山宅へ 訪問に来た 美由とシンシアに、

 啓輔は 心から礼を述べる。

 啓輔は 介護に対して 暗いイメージしかなかったが、

 元気が出る介護が できるようになった。

 似合わぬエプロン姿で 一生懸命 道子の世話をする啓輔に、

 美由は 微笑ましいものを感じる。

 バケツをひっくり返したり、料理の鍋を 焦がしたりしながらも、

 啓輔は笑って 道子の世話を焼く。

 啓輔は 最近、道子と穏やかなときを 共有するようになったと言う。

 ただ 並んで 座っているだけだが、

 今まで こんなふうに 母の顔を じっくり見たこともなかった。

 シンシアは、それは 家族に与えられた 「とき」 なのだと言う。

 それを 大切にしてほしいと。

 啓輔は 庭を見ながら 幼稚園のときのことを 思い出す。

 昔 ここで お袋と一緒に 四葉のクローバを探した。

 狭い庭で やっと見つけた 四葉のクローバを、

 啓輔は 近所の友達に見せて回った。

 そのうち クローバの取り合いになり、葉っぱが千切れてしまう。

 啓輔は泣きじゃくって 家に帰り、

「元に戻して!」

 と母に泣きすがった。

 母は 千切れたものは 戻らないんだよ と静かに言い、

 悲しむ啓輔を いつまでも抱いて 一緒にいてくれた。

 啓輔は そのまま母の胸で 眠ってしまった……。

 昔は そんな 「とき」 があったんだなあ と、啓輔は感慨にふける。

 美由は 啓輔と道子を見て、逆に 自分のほうが 心が癒される。

 やっぱり この仕事をやっていきたいと、美由は思い直す。

 シンシアは 美由と啓輔に、今度の日曜日、

 リフレッシュするために 社長の試合を 応援に行こうと誘う。

 「試合?」

 美由と啓輔は 意味が分からない。

(続く)
 
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