1985年、群馬県・御巣鷹山に墜落した 日航ジャンボ123便。
死者540人を出した、史上最大 最悪の航空機事故。
当時、奇跡的に助かった少女が 自衛隊員にしっかりと 抱き抱えられて、
ヘリコプターに つり上げられていく映像を、僕もはっきり覚えています。
でも その裏では、事故を連日報道し続けた 地元新聞社の中で、
様々な人間関係が交錯する、もうひとつのドラマが 繰り広げられていたのでした。
原作は、自身が新聞記者として この事故の取材に当たった 横山秀夫が、
実体験を元に描いた 同名小説です。
( 他の作品に 「半落ち」 「出口のない海」 など。)
主人公の・悠木 (堤真一) は、
社内の 抜いた抜かれたの競争から 一線を画した、実直な一匹狼の 遊軍記者。
ワンマン社長 (山崎努) の鶴の一声で、
未曾有の墜落事故の 全権デスクに抜擢されます。
編集局の上司は、かつて 連合赤軍や大久保清の報道をした、
過去の栄光にしがみつく “恐竜”たち。
新聞記者は足で稼ぐものだという 時代錯誤の考えで、
局内には 無線機さえ導入していません。
悠木は キャップの佐山 (堺雅人) を、“丸腰で” 現場の山に送り込みます。
(当然、携帯電話はまだありません。)
佐山たちは 救護隊の無線機や 民家の電話を借りながら、
悲惨極まり事故現場の取材を 必死で行ない、記事を悠木に伝えます。
しかし編集局長たちは 悠木に嫉妬し、佐山の記事が 一面に掲載される妨害をします。
妬み、手柄争い、部下との板挟み、信念と利害のぶつかり合い,
締め切り時間との 1分を争う闘い、編集局と販売局の 確執と権謀術数、仲間の死…。
凄まじい緊迫感と 葛藤が渦巻いていきます。
悠木は 記事を掲載するには、情報の裏を 確実に取ること、
「チェック、ダブルチェック」 を 信条にやってきました。
苦労の末、事故原因についての スクープを入手しましたが、
100%確実とは 言い切れないものがあります。
他社を出し抜くことを迫る 次長との言い争い、記事を掲載するか否か、
悠木は究極の選択を 迫られるのでした……。
実話を元にした話ですが、男同士の 互いの人格否定にも繋がる 激しい諍い、
こういう激突のなかで 人間は錬磨されていくのだなと、思いを馳せました。
当時のできごとと、主人公の 現在の登山のシーンが カットバックされて、
効果的な物語を 紡ぎだしていました。