「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「生死命(いのち)の処方箋」(1) …… プロローグ

2010年07月30日 20時58分02秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 〔登場人物〕

佐伯 美和子 (28才・ 東央医科大学病院消化器
       内科医師)

佐伯 淳一 (18才・ 美和子の弟・ クリグラー
       =ナジャール症候群患者)

世良 康彦 (33才・ 美和子の恋人・ 報道カメ
       ラマン)

平島 多佳 (17才・ 糖尿病性腎症患者・
       臓器受容者<レシピエント>)

若林医師 (52才・ 東央大病院消化器内科・
      淳一の主治医)

緒方助教授 (48才・ 同消化器外科・ 移植医)

川添医師 (37才・ 同救命救急センター)

木下 幸枝 (40才・ 脳出血患者・ 臓器提供者
       <ドナー>)

木下 直哉 (45才・ 幸枝の夫)

山岡医師 (44才・ 移植医)

小池医師 (39才・ 移植医)

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○淳一の部屋

  晧々と輝く光。

  二~三畳の狭い部屋の 天井・壁全面に取

  り付けられた 数十本の蛍光灯。

  床もガラス張りで 下に蛍光灯が光る。

  美和子と、 トランクス姿の淳一が、 水中

  目鏡のような 黒いサングラスを掛けて座

  っている。

  淳一は黄疸で 全身が黒っぽい。

  小さな座り机の上には 生と死に関する本

  など。

  美和子、 淳一の顔の前に 人差し指を出す。

  淳一、 美和子の指先に 自分の指先を合わ

  せる。

淳一 「E・T……」

  美和子、 にっこり微笑む。

  美和子、 自分の鼻をチョンチョン指差す。

美和子 「鼻ゝゝ……」

  淳一も 自分の鼻を指で差す。

美和子 「鼻ゝゝ耳! (パッと自分の口を差

 す)」

淳一 「ホイ! (パッと自分の耳を差す)」

美和子 「(にっこり) OK。じゃ、立って、

 ジュン」

淳一 「はいはい」

  淳一、 立って両手を広げ、 片足を上げる。

美和子 「目つぶって」

淳一 「ヨッ……」

  淳一、 ぐらつかずに立っている。

美和子 「うん、大丈夫だね (にっこり)」

淳一 「(座りながら) 今んとこね。いつ頭に

 来て、 プッツンするかな (あっけらかん

 と)」

美和子 「(淳一の頭を抱く) ジュン、あたし

 が絶対 そんなことさせない」

淳一 「やめろよ、姉キ…… (こそばゆい)」


○回想 (10年前)

  桜舞う東央大学、 合格発表の会場。

  淳一(8才)と共に、 祈るように自分の

  名前を探す 美和子(18才)。

  淳一は やはり黄疸で体が黒っぽい。

淳一 「(美和子の名を見つけ) あった! お姉

 ちゃん、あれ!」

美和子 「あっ、あった!!」

淳一 「やったア!!」

美和子 「(淳一を抱きしめ) ジュン!……」

淳一 「お姉ちゃん……!」

美和子 「あたし、 きっとジュンを治してあげ

 るからね……!」

○淳一の部屋

  光の中の二人。
 
○タイトル 『生死命(いのち)の処方箋』

(次の記事に続く)
 
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