「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

淳一 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (2)

2010年07月31日 21時44分43秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
○佐伯宅・ ダイニングキッチン (朝)

  2LDKのアパート。

  美和子が、 忙しげに朝食の用意をする

  そのかたわら、 淳一の弁当作りをしている。

  時計に目をやり 淳一の部屋へ走る。
 

○同・ 淳一の部屋の前

美和子 「(戸をドンドン叩きながら) ジュン、

 いつまで寝てるの!?  早く起きなさい!」

淳一の声 「(眠そうに) う~ん………」

美和子 「また遅刻するよ!」

  美和子、またキッチンへ走る。
 

○同・ ダイニングキッチン

  美和子、 支度の続きをする。

  淳一が目を擦りながら、 体長30cm位の

  トカゲ(外国産)を抱いて来る。

淳一 「(寝ぼけ眼で) ポチに 餌やったァ……

 ?」

美和子 「まだ寝ぼけてるの?  さっさと着替

 えて!」

淳一 「ふにゃ………」

   × × × × ×

  淳一、 パンをほおばり 牛乳で流し込む。

美和子 「(鏡の前で忙しく髪をときながら)

 今日は必ず 6時までに帰ってくるのよ。

 きのうは10時間しか 光 浴びてないんだか

 ら」

淳一 「ちぇっ、 夕方から 日焼けサロンに行こ

 うと
思ってたのに」

美和子 「(笑) ばか、 そのうえまだ 黒くなり

 たいわけ?」

  淳一、 弁当をカバンに詰め、 急いで出て

  いこうとする。

淳一 「じゃ、 行くよ!」

美和子 「こら、 また忘れる!」

淳一 「あちゃ…… (またかというように 引き

 返す)」

  淳一、 父と母の遺影に 手を合わせる。

淳一 「(ぱっと踵を返して) 行ってきまー

 す!」

美和子 「ちゃんと横断歩道 渡るんだよ、 黄疸

 少年!」
 

○東央大学病院・ 第二内科 (消化器内科)・

 病室

  肝炎の患者が 発作を起こし、 全身痙攣し

  て 訳の分からない うわ言をわめいている。

  美和子とナースが二人、 処置をしている。

  喉頭鏡を使って 気管内挿管をする美和子。

美和子 「気道確保、 アンビューバッグ!」

ナース1 「はい! (アンビューバッグを押

 す)」

美和子 「胸の動きに注意して」

  患者の手のひらが バタバタと 鳥の羽根の

  ように震える。

ナース2 「佐伯先生、 羽ばたき振戦です…

 …!」

美和子 「鼻から胃管挿入して、 ラクツロース

 注入!」

(次の日記に続く)
 
コメント
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