元調理師の男性 (52才) は、 窃盗を繰り返し、 2年あまり服役しました。
妻子とは縁が切れ、 出所後は更生保護施設を頼り、
前歴を隠して 職を探しましたが、 全て断られました。
そして、 施設の掲示板に 求人を出していた、 土木建設会社に連絡を取りました。
社長から、 「前歴も悩みも ありのままに話していい」 と 声をかけられ、
気持ちが軽くなりました。
この土木会社は、 出所者を受け入れる 「協力雇用主」 として 法務省に登録。
今では 約100人の従業員のうち、 2~3割が出所者です。
きっかけは、 窃盗事件の捜査に 協力したことでした。
社長は、 「積極的に出所者を雇い、 会社を 再犯の歯止めにできないか」
と考えました。
出所者が再犯を繰り返すのは、 孤独だからだと思うのです。
再犯者の7割以上は 無職の人です。
法務省は 協力雇用主の拡大に 力を入れ、 10年前の約2倍になりました。
しかし 中には、 出所者を雇っても 多くが短期間で辞めていったり、
無断欠勤で 現場の作業が滞ることも 少なくありません。
協力雇用主による雇用者は、
07年の685人をピークに、 今年5月は505人でした。
ある協力雇用主は、 強盗殺人などで無期懲役刑を受けた 元受刑者 (78) を、
7年間雇い続けました。
従業員とトラブルを起こしても 社長はかばい、前歴が知られないよう 気遣いました。
元受刑者は、 被害者の墓参りを 毎年続けたことが 評価され、
恩赦で刑の執行が 免除されました。
「重罪をどう償うかは 本人の問題で、 過去を理由に 雇わないのはよくない。
働くことで更生したいという 意思があるなら、
誰かが 寄り添わなくてはいけない。」
社長は そう信じています。
〔 読売新聞 「罪と罰 -- 更生への道」 より 〕