「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

薬による嚥下障害 -- 胃ろうを考える (2)

2011年11月30日 20時48分32秒 | 介護帳
 
 療養目的で転院してきた 86才の女性は、

 CT画像では 脳梗塞の痕跡もなく、 認知症も軽いのに、

 口から食べられないでいました。

 しかし担当医は、 女性が飲んでいる 薬のリストを見て、

 薬による嚥下障害だろうと 見当がついたのです。

 女性は 数年前うつ病と診断され、 精神安定剤など 8種類の薬を処方されました。

 それから食が細くなり、 誤嚥性肺炎を起こして入院。

 嚥下訓練をしましたが、 口から充分食べられず、 医師の勧めで胃ろうにしました。

 しかし状況は改善せず、 転院時は無表情で ほぼ寝たきり状態に。

 転院先の病院では、 8種類の薬を、 別の抗うつ剤1種類だけにしたところ、

 1週間もしないうちに 女性の意識がはっきりし、 会話も戻ってきました。

 胃ろうを使わず 食べられるようになり、

 食べたいものを 要求するようにまでなったのです。

 高齢になると 肝臓や腎臓の働きが衰え、 薬の成分が分解できず、

 そのせいで 嚥下の筋肉が鈍って、 のみ込みが悪くなることが 少なくありません。

 高齢者の嚥下障害の原因を 真剣に探す病院は少なく、

 不必要な胃ろうにしているケースが 多いと思われます。

 認知症の人の調査により、 薬の影響で

 歩行障害や活動の低下、 尿失禁などが起きていることが 明らかになりました。

 眠りがちで 食事も取れなかった人が、 薬の中止で 改善する例があるのです。

 呑み込みづらい原因が何なのか、 確かめることが必要です。

〔 読売新聞 「医療ルネッサンス」 より 〕
 
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