(前の記事からの続き)
広島少年院はその以前、 規律が大きく乱れました。
新任の職員は なめられて指導できず、
少年たちは 好き勝手にやっている状態でした。
職員に 「あのような時代には 絶対に戻りたくない」 という意識が、
根強く引き継がれていたといいます。
法務省が 全国の少年院の職員に 行なったアンケートでは、
過去に暴力行為などの 虐待をしたことがあるという回答が 1割ありました。
元法務教官は、
「暴力に頼るのは論外だが、 少年院では 施設の秩序維持のためには、
少年たちを 厳しく統制せざるを得ないと 考える傾向がある」 と指摘します。
ある法務教官は、 一人の少年のことが 忘れられません。
交際相手を巡り トラブルになった男性に 激しい暴行を加えた少年は、
「被害者は自分だ」 と 教官に食ってかかるだけでした。
しかし、 時には個室で生活させ、 他の教官も含めて話すうち、
家族がアルコール依存症で、 暴力を受けて育ったことを 語り出します。
「被害者にどうやって 謝ればいいでしょうか」 と
相談してくるまでになったのです。
「力で抑え込んでも、 問題の根本は解決しない。
大切なのは、 自分を受け入れてくれる 人がいると、 少年に知らせること」
この法務教官は 今もそんな思いで、 少年たちと向き合っています。
〔 読売新聞より 〕