日系人達は、10人が10人「お金が貯まったら母国に帰って家を買い、そしてビジネスでも始めよう!」皆そう思ってやって来るのです。だから、当初、日系人達は自分たちのこと自ら「デカセギ」と呼んでいたのであったのですが・・・。
しかし、日系人が日本に来るようになって、もう17年になるのです。もう、「デカセギ」という言葉は誰も使わなくなりました。それは、帰国して、母国に家を買っても、或いは、ビジネスを始めても、ほとんどの者達は、やがては日本に戻ってくるからなのです。
みんな、食べる物も節約して、3Kと呼ばれる肉体労働に従事し、毎日残業をして、場合によっては休日さえも返上してお金を貯めているのです。日本人に”出稼ぎ日系人”と冷笑されても、本国の家族の為に送金し、家を買うための貯金をしたのでした。そして、日本でのキツイ仕事とおさらばして、故郷に立派な家を建て、店舗を開いた者も多かったのでしたが・・・。
しかし、彼等はなぜか日本に戻って来てしまうのです。残業が少なくなって、90年代初頭のようには、今では稼げる仕事などまず無いにもかかわらず・・・。しかし、強盗や誘拐の心配も無く、夜は安心して眠れるのです。
会社(工場)では、ガイジン、ガイジンといわれ、社員の同僚達とは待遇や給料は明らかに違います。給料を比較しても、日系人の給料は安いのです。しかし、給料の支払が遅れたり、会社が潰れてただ働きとなる心配はほとんど無いのです。ある意味、諦めて気楽に働けば、それなりには楽しいのです。
勿論、出世どころか、保証、特に厚生年金や健康保険にも加入していないから、年金は貰えないのです。だから、とても不安ではあるのですが、日本国籍が取得できれば、なんとかなると思っているのです。
子供達の教育のこともあります。日本で教育を受けさせる方がレベルが断然高いのです。しかし、家ではポルトガル語、スペイン語ばかりで話すから、子供達の日本語の成績ばかりか、どの教科の成績も良くはないのです。だから、イジメに遭うことも多く、義務教育でさえ中退してしまう子供達も多いのです。それでも、母国の学校に行くよりよっぽどマシだと彼らは日系人達は思っているのです。
自分たち日系人達が、日本社会で最低レベルに近い生活をしているらしいことは、彼らは分かっているのです。しかし、本国での最低のレベルの生活に比べたら、こちらの方が断然良いのです。
さすがに、子供達には、自分たちのようになって欲しくはないと皆思っているのです。そして、その子供達への教育は、日本で受けさせたいと思っているのです。
また、最近は、永住許可が貰い易くなりました。だから、毎月が家賃並の長期ローンが組めるので、家賃並の支払で家が買えてしまいます。ローンは家賃並ではありますが、請負業者に勤務しているので、仕事が無くなると支払が滞ってローンが払えなくなり、破綻する者も結構いるのです。でも、家賃並だから、滞納して買った家が差し押さえになったとしても、大して深刻ではないし、腹も立たないのです。そう!また、やり直せば良いと思ってしまうのです。
ただ、もう母国へ帰る気は起こりません。かといって、このまま、年金のないまま日本で暮らして行ける自信も無いのです。
そう、彼等南米日系人は、祖国として南米での生活を忘れ去ろうとしています。と、いうか、彼等は再び日本に移民しようとしているのです。かつて、祖父母や曾祖父母達が辿ってきた道と同じように。
その不安を忘れるさせるのが、同胞達の存在なのです。彼等とビールを飲み、サッカーを見たり、或いは、母国のTVドラマの話しをしていれば、気が休まるのです。そうでもしないと、キツイく、キケンで、キタナイ仕事は、やはり辛いのです。
どうなる!南米日系人達!
君たちは、また先祖達と同じ道を運命として歩んで行くのか!
そして、日本社会に同化してゆけるのか!
学校中退者が多い子供達に、未来はあるのか!
私は本当に心配しているのです。だから、彼等に正社員になるよう常に勧めています。若い人達には年金加入を勧めています。子供の居る親達には、学校を中退させないよう、常に声をかけています。「あなた達と同じように子供達をしたいのですか?」と。それが、若かかりし頃の私を育ててくれたラテンアメリカへの恩返しだと、私は思っているからなのです。