行政書士中村和夫の独り言

外国人雇用・採用コンサルティング、渉外戸籍、入管手続等を専門とする26年目の国際派行政書士が好き勝手につぶやいています!

人手不足の国は豊かな国ばかり?

2008-07-24 00:51:09 | 国際・政治

 昨年10月に、フジサンケイ・ビジネス・アイの専門家コラムの中で、「外国人の雇用・採用なくして、企業は将来も存続してゆけるのか?」(http://www.entre-stage.net/est04/)という題名のコラム記事を書き、かなりの反響がありました。そして、このコラム記事は未だに見ることができるのですが・・・。

 ところで、私は外国人在留資格手続の専門家であり、かつ、外国人雇用・採用コンサルタントでもあるので、おそらく皆さんは、私が外国人の移民に積極的なのだろうと想像されていると思います。ところが、実は全く違うのです。寧ろ、無差別な移民政策には反対なのです。それは以下の理由によります。

 一つ目の理由ですが、単純労働者系移民を急速に増大させると、彼等が社会の底辺となってしまい、社会的に差別の標的とされる可能性が高いからです。これは、過去の事例ですとアメリカの黒人、中南米からの移民であるラティノス達、イギリスのインド・パキンスタン系住民、ドイツのトルコ系住民、フランスのアフリカ系住民等々。ですので、歴史的経緯からして、日本に移民が大量に流入した場合、その移民達は数多くの悲劇や迫害、差別といった苦痛を必ず受けることになる筈です。一方、優秀な移民のみの流入を受け入れたとしても、商売上手だったユダヤ系の人達が、過去にはドイツで迫害された忌まわしい記憶もあります。ですので、急速に社会進出する程の勢力を誇る外国人集団が台頭して来た時に、日本国民の一部がそれを妬んで彼等を迫害しないという保証は全くありません。

 二つ目の理由としては、本来産業として陶太されるべき斜陽業種が、こういった安い賃金の労働者の流入により不自然な形で生き残ってしまう事です。こういった産業は自然の法則に従って陶太されるべきだと思います。しかしながら、人手だけに頼る3K職場産業の中で、社会生活上どうしても必要不可欠な業種(老人介護、清掃やクリーニング、ゴミ収集や分別など)は、社会全体のコストとして高価なサービスとなったとしても、我々全体でカバーして行くべきだと考えます。

 食糧安保政策という観点から農林水産業や一部の非効率的な産業を積極的に保護すべきだという考えも確かにあると思います。しかしながら、国産食料品イクオール高級品として、やはり一部生産者のみが生き残って行く姿の方が寧ろ自然なような気がします。日本の高級食材であるマグロや霜降り牛肉、コシヒカリ等のお米やその他の高級食材が外国に高値で輸出されるくらいの方が私は良いと思うのですが・・・。既に日用雑貨品、衣料品など汎用品の殆どが外国産製品(国産ブランドでも)である以上、食料品だけを国内で生産調達しようという考えは、かなり無理な話ではないかと思います。

 最後の理由ですが、有史以来、人手不足の国が貧しかった例は無かったと記憶してます。つまり、今後も日本は未来永劫、人手不足で悩むべきだと私は思います。人手が足りなければ、産業界や社会全体が労働者を大切にします。資本主義国家で労働者が大切にされている国では、犯罪は殆ど起こりません。また、産業は、この慢性的な人手不足を何とか解消させようとして、技術革新を繰り返そうとします。それが産業技術を飛躍的に進歩させます。日本が世界で圧倒的なロボット生産国であるのは、慢性的な人手不足がもたらした素晴らしい結果だと私は思っています。ところが、外国人移民を急増させて、人材の飢餓感が無くなれば、産業のロボット化や各種産業の自動化技術は確実に衰退します。

 私は外国人排斥論者などでは決してありません。寧ろ、外国人との共存主義者です。だからこそ、産業の進歩を阻害させ、労働者が大切に扱われる社会を崩壊させるような大量の外国人移民の流入には絶対反対なのです。外国人移民の大量流入を阻止することは、我々日本国民のみの為ならず、これから我々と共に共存共栄してゆく在日外国人の方々の為にとっても、必ず幸福な結果に繋がる筈だと私は確信しているからなのです。

 以上のような私見を述べてはみたものの、日本はおそらく我々が未だかつて経験したことのないような未曾有の人手不足に陥る可能性があります。理論上、年間約70万人の就労者人口の減少が、少なくてもこれから20年以上に渡って毎年確実に起こるのですから・・・。

 私が一番恐れるのは、パニック状態になった産業界や国民の大合唱の下で、何の施策や社会的な準備をせずして、なし崩し的に大量の移民を受け入れてしまうことなのです。そうなれば、かつて欧米諸国が犯した失敗を繰り返すことは間違いありません。そんな愚行を繰り返さない為にも、今のうちからある程度の外国人移民の受け入れは避けられないという認識を持って、今後私達日本人社会が、どのようにして外国人達と共存共栄して行ける社会を作って行かなければならないのかという議論を真剣にやってゆかなければならない時期にもう来ているからなのです。皆さん、ご家庭やご友人同士の席でも結構ですから、是非真剣に考えてみて下さい!

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コメント (4)
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