一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『はじめての親鸞』

2018-12-31 | 乱読日記

墓のこととかいろいろ考えるにあたって、まずは浄土真宗をすこしはかじろうと入門編として。

以下はメモ。

 親鸞は京都で九十歳の生涯を終えました。生涯を終える時の言葉として有名なのが「それがし閉眼せば賀茂河にいれて魚に与ふべし」という言葉ですね。
 自分が死んだら、遺体は葬式などせずに鴨川の水に流して魚の餌にせよ、というのです。でも実際にはそうはいかなかったことは、御存知の通りです。 

 親鸞の場合も、やはり川に流してはもらえなかった。遺骨は分配されて、それをもとにやがて大谷に親鸞の墓が作られ、大谷廟堂となり、二代三代と時代が移っていく中でそこに寺ができ、全国の信州の門徒の中心になっていった歴史があります。

 その人の心が安らぎ、今日一日を幸せに生きられる、そのために喜捨をする。布施と心の安らぎと、そういうやりとりが寺と人々の本来の関係であり、そこから葬式仏教と呼ばれる現代の寺のあり様への疑問も出てくるのでしょうが、かと言って、ブッダの頃の原点に帰ると、それは大変なことになるでしょう。
 原始キリスト教の時代から中世、さらには現代における教会というものを考え併せると、やはり、宗教とはそうして変質していくものなのかもしれません。

 親鸞はこう言った、ああ言ったなどとこだわるばかりで、親鸞の思想を固定してしまい、決めてしまうのは大きな間違いだと思います。生きた形で、揺れ動く、そういう親鸞の思想を私たちは捉えなくてはならないと思うのです。

今の寺は自分にとっても他の親戚にとっても信仰の中心でもないところが問題なんだよなぁ。

★3 

 

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『ほんとうの憲法: 戦後日本憲法学批判』

2018-12-30 | 乱読日記

問題提起としては面白い。ただ「憲法学批判」ではあるが「憲法学」の側と議論の土俵がすりあってなさそう。 

筆者が指摘する「憲法学者コミュニティの知的閉塞」という批判は幾分かは当たっているようにも思うが、憲法学者の側からの反論を封じるオールマイティなカードになっているので、結局、川の両岸から石を投げ合うことになる。
またそれが今の憲法改正議論の置かれている状況と似ているところが残念。


憲法学をめぐる指摘として特に面白かったのは以下の部分

 戦前の日本において、美濃部達吉の憲法学は、エリート層の国家運営を正当化する「密教」の論理を提供していた。しかしその憲法学は、「顕教」としての国体論者たちの大衆扇動によって、排撃された。敗戦の「革命」をへた後、戦後に再生をはかった憲法学は、今度は国家体制の「表」の部分の看板を掲げる役割を担った。そして「裏」が「表」を浸食しないように「抵抗」をし続ける機能を果たすことになった。
 この仕組みが最も安定しているように見えたのは、冷戦時代、特に高度経済成長以降の時代である。軽武装・経済成長を推進する国家政策と、「抵抗の憲法学」は、奇妙ではあるが絶妙の組み合わせを持った。(中略)
 冷戦終結後の四半世紀の間、「戦後日本の国体」が崩壊する兆しは見られない。他方、冷戦時代と全く同じやり方で「戦後日本の国体」が維持されるという幻想の非現実性は強く意識されることになった。

著者が不満なのは、日本国憲法には改正の手続きが定められているにもかかわらず、改正の議論をするときに憲法学者からは現行憲法の解釈論以上のものが出てこない--とすると結局ほとんどの改憲案に原理的に反対することになる--という部分にあるのではないかと思う。
ある改正案に対して、そう変えることがどのような影響を及ぼすことになるのか、ということをニュートラルに提示するのも憲法学者の大事な役目のように思うのだが。

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『戦争調査会 幻の政府文書を読み解く』

2018-12-30 | 乱読日記

「戦争調査会」は1945年11月、幣原喜重郎内閣が日本人自らの手で開戦、敗戦の原因を明らかにしようとした国家プロジェクト。この会議の内容からGHQによって1年弱で廃止されるまでの経緯とその意味を問う。

日本は結果的にはうまく敗戦後の世界に適応して今日に至っているわけだが、歴史の検証となるとすぐに党派性の議論になってしまい、結局過去を検証し将来に生かすことができていないのは残念。
学校教育でも、日中戦争から第二次世界大戦ところは時間切れなのか政治的配慮なのか、ほとんど触れられていない。

あとがきにある、著者のこの主張は重い。

 ・・・戦争調査会の杜氏と今とでは史料状況が格段に異なる。史料状況の飛躍的な改善によて、研究は進展している。しかし先行研究に対する独自性の主張が行き過ぎて、枝葉末節の史料実証主義に陥っている。歴史研究者は書店に溢れる怪しい昭和史本を冷笑する。問題はそのような本が売れる日本の社会状況よりも、なぜ研究の成果が広く共有されないかにある。
 戦争調査会の目的は戦争防止と平和な新国家の建設だった。戦争防止と平和な新国家の建設は、敗戦直後の日本人の誰もが希求したにちがいない。戦争調査会の調査は、研究のための研究ではなかった。困難な状況のなかでも、八方手を尽くして、資料を集め調査をつづけた。戦争調査会を突き動かしていたのは、社会からの差し迫った求めだった。
 今問われるべきは歴史研究の社会的責任である。一次史料の発掘と新しい歴史解釈の目的は、先行研究に対するわずかな優位性を主張するのではなく、社会の求めに応じて、あるいは社会に向かって、歴史理解の指針を示すことでなくてはならない。戦争調査会に学ぶべきは、社会に役立つ歴史研究の重要性である。

★3



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『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』

2018-12-30 | 乱読日記
兵隊、特に現場の一兵卒にはコストをかけない、という意識は、現在の非正規労働や外国人技能実習制度についての議論につながるものがあるのではないかと感じた。

戦争末期になってくると、徴兵制度を維持するために合格のハードルを下げ、体力に劣る新兵を送り出すようになる。ろくな訓練もされない新兵は現地で古参兵のストレス発散の対象にされ、不十分な装備・栄養状態・医療体制のなかで無駄死にしていくさまが、史料に基づいて描かれている。

現代から見れば、まともに戦争を遂行できる人員・物資体制ではなくなっているにもかかわらず、戦争継続のためだけに人を送り続けていたことに戦慄を覚える。

そのような現場、またはそうなる可能性の高い現場は、今もあるのかもしれない。

★4

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『いっとかなあかん店 京都』

2018-12-29 | 乱読日記
出張のついでに足を延ばしてこちらの本の影響を受けて関西の私鉄を攻めたあと、京都に一泊した時にお世話になった本。

一人だと観光客向けの店に予約していくというのも大げさだし、かといって地元の店も敷居が高いし食べログとか観光サイトの記述は信用できない。
そんななかで、読んでいるだけで酒飲みの気持ちにシンクロできる本は得難い。
ここは入れる、ここは地元の人間でないと入らない方がいい、という雰囲気が伝わってくる。

ということで前者のうち一軒に図々しくお邪魔させていただくことができた。

ありがとうございました。

★3.5


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『ストレッチ 少ないリソースで思わぬ成果を出す方法』

2018-12-29 | 乱読日記
「優れた成果を出すには豊富なリソースが必要」という考えにとらわれて、(成果でなく)豊富なリソースを追求することが目的になりがちになることへの警鐘と、限定的なリソースをうまく活用(=ストレッチ)することの重要性を説いた本。

切り口は面白いし、事例も豊富で、事例、研究成果、まとめ、と続いて「最後にストレッチを強化する12の方法」までこの手ビジネス本の定石通りの構成で読みやすい。

ただ、12は多すぎる。

★3.5

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『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』

2018-12-29 | 乱読日記
ネーミングも含めて「GAFA」に対する世論の転機の要因の一つになった本なのだろう。

ミクロの事例からマクロの話までの寄せたり引いたりのバランスと、著者の対象への距離の取り方が絶妙で、わかりやすくて、面白い。

売れるのもわかる。

★4

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『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方  成功を引き寄せるマーケティング入門』

2018-12-29 | 乱読日記
続いて読んだ本の棚卸。

マーケティングのことは素人なので面白く読めた。

経営本に共通するのは、「この本に書いてある通りにやれば成功するなら、なぜ皆やらないのだろう?」という疑問だが、これに対して著者はCMO(Chief Marketing Officer)への権限集中が必要と説く。
そして実際に自分がUSJでどのようにしてその地位をつかんだかについてまで語っているので説得力がある。
若い人には後半のキャリア形成のくだりは、はまる人にははまると思う。

一方で、その後著者はUSJ当時の仲間とマーケティングコンサルの会社を立ち上げている。
これは単純にその方が儲かるからなのか、CMOというポジションが認知されていないかそもそも空きが少ないのか、そのへんも知りたいところだ。

★3

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『絶対に死ぬ私たちがこれだけは知っておきたい健康の話 』

2018-08-11 | 乱読日記

ノウハウ本というよりは、養生、生活習慣が大事だという、理屈では分かっていることを心にきざみ込んでくる金言がちりばめられていて、背筋が改まる。(いつまでもつかはわからないけど・・・)

「これを食べれば/飲めば」とか「この器具を使えば」という健康法を一蹴しているのも爽快。

曰く

生活習慣に面白みを追い求めてはいけない。

本書における「健康」は、「死んでしまうまでの間、この世をけっこう楽しんで生きられるココロとカラダの『いい塩梅』の状態を目指すこと。なんとなく選択しつづけた不健康によって、楽しんで生きられるココロとカラダを手放さなければならなくなるのは、たいへん不本意なことではないでしょうか。

物事を継続するときに大切な考え方がありまして、一度中断したからといって、そこで全部やめてしまう必要はないのです。三日坊主を一日あけて続けたら、ずっと続けているのと同じことです。・・・いったん中断しても再度すんなり始められる人のほうが、ただただ実直に続ける人より、実生活では強いと感じます。

 ★3.5

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『となりのイスラム』

2018-08-07 | 乱読日記
イスラム教・イスラム教徒について語るときには、現代西欧社会のものさしで測るか、または事実の羅列になってしまうことが多いが、本書は彼らがどういうものさしを持っているか、を、著者の研究や実体験をもとに平易に書いた本。

こういう本は大事。

★3

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『生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方』

2018-08-04 | 乱読日記

職場が居心地のよい場所だと感じている人は、意外に少ないのではないかと思っています。
だからこそ、仕事は必ずしも楽しいことではないけれど、そこで居心地よく働けることは大事であり、その結果として楽しみがついてくる可能性はある。

以上は本書からの引用。
これは皆思っているけど、「モチベーション」とか「チームワーク」とかいう掛け声や目標にかき消されて言えない人が多いのではないかと思う。
そもそも目標になるということは、自然発生しないからなんだけど、いちど目標に掲げられると、今度は達成度で評価されることになるので、「ふり」をするのが自己目的になってしまう。
逆に、単に「居心地がいい」と感じている人は、制度のスポット的な恩恵に属しているか、開き直っているか、ノーカンな人が多いように思う。

本書は「好きな日に出勤できる」「出退勤時間は自由」「嫌いな作業はやらなくてよい」など型破りな制度でしかも作業効率をあげ、離職率も減らしたことで話題になった、小さな水産加工会社の社長が書いた本だが、この現実を直視する姿勢を貫いた先に現在があるということが大事なのだと思う。

何か原理的・教条的なものからスタートしたわけでも、「○○メソッド」を売り込もうとしているわけでもないところが大事だし、この「制度」がすべての会社にあてはまると主張しているわけでもない。
本書の紹介を見ると、ほかにも東日本大震災で罹災、二重債務などのマスコミが好みそうなところが多いが、一番大事なのは、この現実的な目線だと思う。

経営者が勝手に妄想することで規制をして、従業員を縛るルールを作るのではなく、あくまでも従業員を信頼したうえでルールを作り、問題があれば、自分たちで軌道修正していくということです。はじめから信用されず、疑いの目で見られていては気持ちよい職場にはなりませんし、ルールもうまく機能していきません。
もちろん想像もしない問題が起きたり、トラブルが発生したりすることもあるでしょう。でもそれはその時に考えればいいのです。
そして実際に起きた問題にどう対処するのかを、従業員とともに考えるのです。そうやって成長していくことができるのが人間なのです。

PDCAサイクルの重要性はいたるところで説かれますが、性悪説に立つPDCAサイクルが規制だらけの負のスパイラルになる例は枚挙にいとまがないのに、そのことに注意喚起する人は少ないですね。
それをやると、コンサルや官庁が飯の食い上げになるからでしょうか。

 ★3.5

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『日帰り旅行は電車に乗って 関西編』

2018-08-01 | 乱読日記
関西の私鉄は関東に比べて面白いと思う。

たぶん、東京の私鉄は開業当初から都市間をつないでいたり、産業用だったりする路線が多く、今やほとんどが通勤路線になってしまっているのに対し、関西の私鉄は近郊の行楽地・名所旧跡をつなぐ路線が今でもたくさん残っている。
これは、明治になって鉄道というものが発達する以前からの行楽地・名所旧跡の蓄積の差によるのではないか。
『鉄道が変えた社寺参詣―初詣は鉄道とともに生まれ育った』に描かれている、明治時代の関西の鉄道間の競争の激しさをみても、当時の勢いがわかる。

今まで関西は出張のとんぼ返りや、旅行にしてもピンポイントで1~2泊程度がせいぜいだったが、ちょっと鉄道を使って足を延ばしてみよう、と思う関西鉄道初心者にとっては、電車と終着駅の魅力を伝える格好のガイドブックになっている。

★3.5

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『今までにない職業をつくる』

2018-07-29 | 乱読日記
甲野善紀さんはすごい。
一度講演会に参加したが、本を読んでも凄さが伝わってくる。
といって、本だけ読んで実践につなげられない自分がいる。

猫に小判という意味で★2.5

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『お世話され上手』

2018-05-06 | 乱読日記
お寺の住職かつ宗教研究者である著者が、自らが営むグループホームの経験から介護する側・される側について、そして「救い」とは何かを語る本。

そう遠くない将来に直面するであろう親の介護の参考に、と思って読み始めたが、実はその先にある「墓をどうする」=墓を建てた後のお寺との付き合いをどうするという問題意識により近い内容だった。

コミュニティの核ではなく葬式・法事だけでつながっているお寺との関係を改めて考えさせられた。

筆者のような問題意識を持った住職がもっと増えるといいのだが。

★3

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『専業主婦は2億円損をする』

2018-05-05 | 乱読日記
橘玲の若い女性向けの雑誌の連載を本にしたもの(なんで買ったのだか覚えていない)

この本は一言でいえば経済的な自由をもつことの大事さを独身女性に説いた本。
タイトルのあおり方に比べると中身はまとも(普通、ともいえるが)

政府の「女性活躍支援」ももっともらしい大義名分をやめて、本書のような「損得」の切り口で議論した方がいいんじゃないかと思う。

★2.5

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