一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』

2018-05-04 | 乱読日記
GW恒例の蔵書と積読処分のなかでななめ読み。

何年か前のベストセラー。

アドラーという人の心理学の解説本で、とっつきやすさのための対話形式なのだろうが、小芝居が気になってかえって気が散る。

ものの考え方、という意味では参考になるところが結構ある。

これが「心理学」なんだろうか?という疑問は最後まで残ったが(入門書なので仕方ないかもしれないが)


★2.5







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『仕事と家族 - 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』

2018-03-18 | 乱読日記
良書。
女性の労働参加率の低さ、出生率の低下という日本が直面している課題を、スウェーデンとアメリカという「大きな政府」と「小さな政府」という正反対に位置する国が、それぞれ比較的良好なパフォーマンスを示してきたことを過去に遡って分析しながら、日本においてどのような政策が有効であるのかを論じた本。

著者は「労働力と出生力の維持拡大」を目標として政策を選択すべきと説く。

日本では1970年代以降の経済不況を背景に、政府が福祉を「企業と家族」に委託する政策をとったため、企業は無限定な働き方を前提とする安定雇用を通じて男性の所得を維持させ、上の両国と異なり「共働き」社会への移行のチャンスを逃すことになったと分析する。
そして、無限定な働き方を前提としながら導入された均等法が結果的に女性の活用を遠ざけてしまったことなどを指摘する。

それ以外にも、未婚化の原因分析、日本で男女の家事分担の進まない理由、ケアワークなどが大幅な効率化が見込めない理由、家族間の格差の問題など示唆に富む指摘が多い。

★5


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

2018-02-19 | 乱読日記
考えさせられた。

前半ではAIにできること、できないことを、世間の誤解も含めて明快に解説している。
後半では本来AIに対して優位に立つべき「意味を読み取る力」が落ちている現状を大規模に実施したリーディングスキルテストの結果をもとに厳然たる事実として提示している(大人も含めてなので今に始まったことではないのかもしれない)

印象的だったのが、AIは観測も数量化もできないことは無視してサンプルとの差を最少となることを目標とする、すなわち真の世界と確率を意図的に混同しているというところと、「学」から始まる単語を見ると「学級」でも「学年」でも「学業」でも全部「がっこう」と読む生徒になぜか、と訊ねたところ「その方がよく当たるから」と答えた、という話。

ドリルと暗記だけでそこそこの大学までは行けてしまう(のでそこそこの会社には入れてしまう)という現状は「AIに淘汰される仕事」以前に「人間がAIのレベルに下りて行っている」という自殺行為であり、それを止めないとAIが進歩しなかったとしても先がないように思える。

「東ロボ君」プロジェクトを主導し、現在は中高生の読解力をあげるための研究開発をしている著者の、現状へのいらだちが伝わってくる。

★5



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『主権なき平和国家 地位協定の国際比較からみる日本の姿 』

2018-02-12 | 乱読日記

共著者の伊勢崎賢治氏は最近メディアやtwitterなどで盛んに情報発信しているが、本書は日米地位協定と今の日本の主権のありようについて、過去の歴史や他国の事情も含めて詳しく説明している。
憲法改正について考える前に必読の書だと思う。

憲法とは、国家の骨格を決めるものです。しかし、今の日本は、日米地位協定によって、国家から主権が骨抜きにされている状態です。主権を回復せずに改憲を論じても仕方がありません。国論を二分する改憲論議をする前に、まずは政府と国民が一つになって地位協定の根本的な改定に取り組み、主権国家としてアメリカと「対等」な関係をつくりなおすべきではないでしょうか。

 ちなみに、自民党内でも2003年に「日米地位協定の改定を実現し日米の真のパートナーシップを確立する会」という議連が日米地位協定の改定案を出したことがあった。その時の議連の幹事長が現外務大臣の河野太郎衆議院議員であり、当時の発言からも地位協定の問題点は十分認識していると思われる。
憲法改正議論になった時に河野太郎外務大臣の身の処し方に注目したい。

★5

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ものの言い方西東』

2018-01-25 | 乱読日記

 

朝の「おはよう」という挨拶や、「ありがとう」と言う、言わないというのは、個人の性格だけではなく、地域性に根ざした「ものの言い方」すなわち基本にある考え方である、ということを、豊富な事例から解き明かした本。

言い回しの違いなら単に「方言」ですませられがちだが、「言い方」にまで遡った分析が面白い。
『大阪的』で言及された「話の水位の調整」のような、話者の姿勢に関わるところである。

本書ではさらに分析的に以下のような切り口を用意している。
 ・口に出して言う地域と言わない地域
 ・決まった言い方をする地域としない地域
 ・細かく言い分ける地域と言いわけない地域
 ・間接的に言う地域と直接的に言う地域
 ・客観的に話す地域と主観的に話す地域
 ・言葉で相手を気遣う地域と気遣わない地域
 ・会話を創る地域とつくらない地域
前者は近畿圏を中心とした地域(と東京圏)、後者は北関東・東北と九州・沖縄地方に特徴的だという。

このへんは社会的・文化的背景、県民性、行動様式などの要素が混然となっているので、因果関係についての想像力がふくらむ。

著者の指摘で示唆に富むのは「難しいのは、ものの言い方は礼儀やたしなみの問題として、しつけや教育の対象とされる点である」というところ。

 ものの言い方の地域差を大切にするといっても、現代人のこうした価値観や規範意識があるかぎり、なかなか難しい。しかし「メンコイ」や「ハンナリ」は味わい深い言い方だから残しておこう、でも、ものの言い方は変えていかなければいけない、というのはある種のご都合主義である。方言は総体として存在する。発音も単語も文法も、そしてものの言い方も揃っていてこそ、その土地の方言と言える。もし、そのうちのどれかの要素、例えばものの言い方が変えられてしまえば、方言の他の側面もそれと連動して、一気にその土地らしさを失っていく恐れがある。
 この問題は、保護・継承と教育・しつけとの狭間にあって、簡単には結論が出せない。ただ、一つの価値観や基準でものの言い方を強引に変えていこうとすれば、それは地域文化の衰弱につながることは確かである。

★3.5

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『猿の見る夢』

2018-01-22 | 乱読日記
銀行からアパレル会社に天下った、60間近の、小心者の俗物でしかも脇が甘い男のドタバタを描いた小説。

場面場面を切り取ると主人公の発想や行動は「あるある」なんだが、それをまとめて見せるとコメディになる。

巻末に、初出は「週刊現代」の連載だったとある。

そうか、この小説は、「週刊現代」の読者層である中高年サラリーマンがこの小説を読んで、うらやましがる者、溜飲を下げる者、「俺ならもっと上手くやる」と思う者などいろんな反応をするだろうことを見越して、桐野夏生が「猿」たちに与えたエサだったんだ、と合点。

★3

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『Who Gets What』

2018-01-19 | 乱読日記

市場の失敗をできるだけ少なくし、マッチメイキングをスムーズに行うか、という「マーケットデザイン」について、実例をあげてわかりやすく説明してくれている。

それ以上に、大学の研究者と公共団体や民間団体との協働関係が印象的だった。
(日本では違っていそう...)

★4

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ウニはすごい バッタもすごい - デザインの生物学』

2018-01-17 | 乱読日記

『ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 』の著者の25年ぶりの続編

今回は動物の形態に焦点をあてている。

何年か前「ウニは何で五角形なんだろう」という話を寿司屋の大将としていたが、有力な仮説自体1976年という新しいものだったことに驚く。

地上でもっとも繁栄している昆虫から、著者の専門のナマコ(上記のウニも棘皮動物門なのでおこぼれに預かってヒトデとともに一章を割かれている)から脊椎動物まで、現在の形態を得るに至った進化の過程を詳しく説明してくれている。

末尾に考えさせられるひとことがある。

恒温動物になって体温を一定に保てるのも、体が大きいおかげである。相対的に表面積が小さいと、乾燥しにくいだけでなく、熱が出入りしにくくなる。そして体が大きいから長い毛をはやして断熱でき、氷河期にも耐えてきた。われわれヒトが脳をもてるのも、体が大きければこそである。陸で成功した二大動物の一方である昆虫は小さいサイズで成功し、もう一方の四肢動物は大きいサイズで成功したのだ。

★5


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『うしろめたさの人類学』

2018-01-15 | 乱読日記

市場・社会・国家の境界を越えること、そもそもその境界自体が相対的であることを示すのが人類学の役割だ、という著者の熱い思いが伝わってくる。

作者にとっては研究対象のエチオピアがその道具なわけだが、自分たちにとっても「それぞれのエチオピア」を持つことは大事だと思う。

★3.5

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『エコハウスのウソ 増補改訂版』

2018-01-12 | 乱読日記

家を建てよう、リフォームしようとしている人は必読の良書。
エアコンの選定だけでも役に立つ。

エコハウスに関する誤解を実証データをもとに解き明かした「日経アーキテクチャー」連載のコラムを、2020年省エネ基準義務化に対応して大幅化加筆したもの。

目次から抜粋するが、いくつかひっかかるところがある場合は読んでみたほうがいい。

プロローグ 省エネ基準義務化
 Q2 新省エネ基準を守るだけで温かい家になる?
 第1章 人と気候
 Q7 温暖地は冬の朝も温暖?
 第2章 建物の外皮性能
 Q14 断熱材と構法にこだわれば断熱はバッチリ?
 第3章 冷房
 Q17 選ぶならハイパワーのエアコン?
 第4章 夏への備え
 Q22 夜間放射で夏の夜もヒンヤリ?
 第5章 吹き抜け・大開口
 Q26 大窓でダイレクトゲイン?
 第6章 暖房
 Q28 エアコンは暖房に向かない?
 第7章 再生可能エネルギー
 Q33 エネルギーは創り出せる?
 第8章 電気
 Q38 省エネよりゼロエネ?

★5

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『大阪的』

2018-01-10 | 乱読日記

大阪の作家と編集者による「大阪的」なものについての対談。

(津村記久子)
しゃべっていても水位の調節みたいなことを大阪の人は平気でやる。こいつの言ってることよりおもしろいことを今言うたろとか、同じぐらいのこと言おかなとか、ちょっと相手を立てておもんないこと言おう、っていうことを。でも、他の土地の人はなかなかそういうことをやらない感じがしますね。ただ話に勝とうとして、それやない、みたいなことを言ったり、そもそも水位が見えてなかったりする。

(江 弘毅)
大阪弁が言語としてどのような特徴を有した方言なのか、といった側面から見ると的外れなことになる。そうではなくて、人への応接の仕方なのだ。

とても面白いが、東京もんが「わかる」と言ってはいけない感じがするので
★3.5

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『少数株主』

2018-01-08 | 乱読日記
非公開会社における少数株主のおかれている問題-特に同族株主における相続税評価と権利の弱さのアンバランス-をテーマにしているが、切り口が一点突破で広がりがない。一方で小説としては「団塊世代の読むバイアグラ」的でコテコテ感ありすぎ。

創業者から代替わりする中で株主が広がり、経営にかかわる者とそうでないものの差が出る、という問題は「少数株主をないがしろにしながら公私混同で私腹を肥やしている二代目社長」という切り口なら本書の描いている状況は当てはまるかもしれないが、本書に出てくるような「公正中立な社外取締役」というのが現実的かというと疑問。結局親戚間の多数派工作のゴタゴタが増えるだけというところが多くなりそう。

せっかく弁護士が書いているのなら、より公正な経営と利益配分のありかたを実現するような他の経営形態の提案があってもいいと思った(もっとも、種類株などでやたらに複雑にしても費用対効果がよくないかもしれないが)。

小説としては、美食や美術品とか箴言についてのウンチクが過剰。バブル期を生き延びた不動産会社経営者が主人公だからかもしれないが、取り上げられているレストラン・酒・マンションなど、あえて固有名詞を出す必要はないんじゃないの?と思う。ここは本業の小説家との筆力の差を補っているということか。
面白いのは、食事・美術品・酒・マンションなどの小物は豊富に登場するが、バブル期のお約束の高級車が出てこないこと。ここは作者の趣味の問題か?


★2.5

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』

2018-01-05 | 乱読日記

饒舌、研究者をめぐる事情が垣間見える、鳥類の話もそこそこ面白い。

1973年生まれの著者にしてはオヤジのネタが多いな、と妙なところに感心。

★3.5

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『60歳までに知っておきたい金融マーケットのしくみ』

2018-01-04 | 乱読日記

とてもよくまとまっている。
60歳とは言わず、早いうちに読んでおいて損はない。

自分では理解しているつもりのことは、ついつい結論ありきで端折ってしまうので、よくわかっていない人にわかりやすく説明する、というのは難しい。
特に自分の親などに説明する時などはフラストレーションがたまってしまうが、本書のような懇切丁寧さと、整理の仕方は勉強になる。
また、家人に読ませておけば、紛争の予防にもなるかもしれない。

 

できればシリーズで『60歳までに知っておきたい金融商品の仕組み』というのも出してほしい。
(三井住友信託銀行的には書きにくいかもしれないけど)

★4

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『鉄道が変えた社寺参詣―初詣は鉄道とともに生まれ育った』

2018-01-03 | 乱読日記

正月にぜひ。

「元旦に初詣」という習慣が、明治期の鉄道の旅客獲得競争に端を発して、民衆に娯楽として定着したものだ、ということを、当時の新聞広告や文献などを元に解き明かした本。

明治期には国鉄以外にも民間鉄道会社が多数あり、それらが仁義なき競争を繰り広げていた様子、当時の行楽の距離としては最適だった成田山と川崎大師、旧暦から新暦への変更の際の混乱、地元の檀家・氏子と行楽客の行動の違いと多数派が席巻していった様子など、非常に興味深い。

★4.5



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする