一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

朝も夜もダライ・ラマ

2005-01-27 | 乱読日記
通勤用図書を読み終えたので、新しいものに。

今までの図書「中国権力者たちの身上調書」は最初の予感どおりとても面白かった。

胡錦濤らの「第四世代」選抜の経緯と、それぞれのプロフィール、考え方がリアルに描かれている。
それに一番の収穫は、結局中国も権力闘争・出世争いはほかの国や組織と同じなんだ、ということ。
出世には運不運もあれば、ゴマすり、派閥争いと、結局普通の人間だ、ということは安心できる。
ただ、エリートとしての競争や責任は大変なんだろうけど。

それにしても、権威あるチャイナ・ウォッチャーはアメリカ人で日本人が少ないのは残念(僕が知らないだけかもしれないけど)

日本は(石原都知事に限らず)中国となると過度に攻撃的になったり、逆に過度に美化したりと、どうも「普通の距離感」がとれなくなるのかもしれない。
距離的にも歴史的にも近すぎるのかな?


で、今度の課題図書は「ダライ・ラマ自伝」自伝

実は今、枕元に寝る前に読むように置いているのが
ジル・ヴァン・グラスドルフ「ダライ・ラマ その知られざる真実」

もともとは半身浴を始める前に風呂上りの就寝前に読んでいたのだが、半身浴を始めると、574ページという厚さがネックになり(水没した場合被害が大きいということもあり)、「寝る前本」になっていた。

この本はチベット学の世界的な専門家であるフランス人の著者の10年以上にわたる調査・取材の結晶とのこと。ダライ・ラマの伝記であるのだが、仏語原題の"La biographie non autorisee"(非承認伝記)とあるようにチベット人やダライ・ラマを単に美化するのでなく、チベット人の業の深さ、政治的稚拙さも公平に描いている。

しかしそれが皮肉や冷笑や内幕話に堕していないのは、著者のダライ・ラマ14世や著者が取材した高僧たちへの尊敬の念、チベットの人々やチベットの大自然への愛情あふれるまなざしによるところが大きい。
美しいくかつ厳しいチベットの自然やチベット人の暮らしぶり・習俗が生き生きと描かれている。

本も後半にさしかかり、中国の迫害を逃れてインドに亡命し亡命チベット政府を樹立する、というひとつの山場をこえたところで、ダライ・ラマ14世本人の書いた自伝も読んでみよう、と思い立った。

まだ始めのところだが、このダライ・ラマ14世という人物、深い人間理解とともに、たくまざるユーモアの持ち主である。

チベット僧院教育の基本は弁証法と討論技術であり、討論では相手の命題をユーモラスに自分に有利に持っていく機知(ウイット)が評価されるのだそうだ。
そもそもチベットでは曲芸的なまでに知的なやりとりが繰り広げられる討論会が市民に人気のある娯楽になっているらしい。
そういう文化的背景もあるのだろうか。


この本も楽しみ。



朝と夜、心はチベットへ、の今日このごろです。



ダライ・ラマ自伝

文芸春秋

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ダライ・ラマ その知られざる真実

河出書房新社

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中国権力者たちの身上調書―秘密文書が暴いた処世術・人脈・将来性

阪急コミュニケーションズ

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コメント (1)
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