一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『ファイアー・ウォール』

2013-08-18 | 乱読日記
スウェーデンの作家ヘニング・マンケルのスウェーデンの地方都市イースタの警察署に勤めるヴァランダーという刑事を主人公にした警察小説のシリーズ。

スウェーデンの警察小説といえば70年代のマルティン・ベックシリーズや、ミステリだと最近のミレニアムシリーズなど、ときどき(日本にも翻訳されるような)ヒット作が生まれる。

福祉国家のさきがけとして、社会問題にも直面してきたから、ということもあるのだろうか。

本作は1998年の作品。翻訳は2012年となる。
シリーズ第1作『殺人者の顔』(1991年、翻訳は2001年)を約10年前(少なくともブログを始める前)に読んで以来。

帯を見ると、このシリーズはイギリスでドラマ化され日本でも有料放送で放映されていたりDVDにもなっているらしい。

その関係で、10年以上のタイムラグを置いて翻訳がされたのだろう。
ドラマも1話90分、ケネス・ブラナーが主演で予算もきっちりかけているようなので、今度DVDも借りてみよう。


本作は、いわゆるサイバー犯罪を題材にしている。
1998年といえば、まだ2000年問題が話題になっていた頃のことなので、取り上げ方としてはかなり早いといえる。
とはいえ、自他ともに認めるローテクのスウェーデンの地方都市のベテラン刑事(既に50台前半になっている)であるヴァランダーが主人公なので、技術的なところは詳しくは触れていない。
犯人の企てが本当に実現可能なのか、逆にもっと簡単な方法があったのではないか、というあたりは、現在からみれば突っ込みどころはあるが、サイバー犯罪の技術自体がテーマではないので深く突っ込
むところではない。

逆に、15年前の作品だが古びた感じはしない。

複数の事件が同時におこり、それらがどう関係してくるのかという、警察小説の醍醐味も味わえる。

そして、マルティン・ベックシリーズでも言えるのだが、主人公の私生活や犯罪事情からスウェーデンの社会を垣間見ることができるのもこのシリーズの魅力である。


バツ一で不器用な男は生活がすさみがちである。しかも子供とはうまくいかない。
中間管理職になると、組織の矛盾もより目に付くようになる。また、ポストをめぐる争いにも巻き込まれる。
リタイヤして別の人生を歩き出す知り合いの話を聞くと胸が騒ぐ。

そんな中でも警察という仕事に愛憎半ばの感情を抱きながら仕事をしている主人公が、本シリーズのなによりの魅力である。





コメント
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