一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『友罪』

2013-08-21 | 乱読日記
上手い。が、上手さだけではない。


 -過去に重大犯罪を犯した人間が、会社の同僚だとわかったら?- 

と「作品の詳細」に書かれてしまっているので、中盤までのストーリー展開は想像できてしまう。
しかし、登場人物の行動・心理の描写が詳細までリアルに描かれ、ぐいぐいと引き込まれる。

常に「善良な人」がいるわけではなく、逆に「悪い人」が常に悪いわけではない(最初から最後まで悪人というのは一人出てくるが)、という当たり前のこと、それぞれが考え、悩み、または本能的に反応しながら生きている。善意が裏目にでてしまうこと、同じ思いなのに行き違ってしまうことなど、ディテールを積み重ねて、救いのないようなストーリーをぐいぐい進めていく。


一方で、読者に、それぞれの登場人物の立場だったらどうする、また、他の登場人物の振る舞いをどう評価する、ということを考えさせる。


そういう意味では上手い小説であるだけでなく、誠実な小説でもある。
ただ、誠実さは、必ずしも優しさを意味しない。

上手さに乗って、映画を見るように一気に最後まで読むという読み方よりは、立ち止まりながら、考えながら読むのが、この本の味わい方のように思う。





コメント
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