一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『目くらましの道』

2013-10-15 | 乱読日記

スウェーデンの作家ヘニング・マンケルの「刑事ヴァランダー」シリーズ。

本書は1995年刊行(日本語版は2007年)で、以前取り上げた『リガの犬たち』と、日本での最新刊である 『ファイアー・ウォール』の間に位置する。

このシリーズは描かれる犯罪や登場人物の人生がを通して現代スウェーデン社会を描いているところに魅力があるのだが、本作は上の2作がスウェーデンが外国の影響を受けつつある(前者はソ連邦の崩壊、後者はインターネットの普及とグローバル化)という切り口だったのに対し、本作は 国内問題-富裕層の犯罪・異常犯罪・幼児売春・DVなど-を取り上げている。


本書も小説として読みごたえがあるのであるが、話の本筋とは別に印象に残ったのが社会保障制度のありかた。

スウェーデンは日本と比べて社会保障制度が進んでいることに加え、女性の社会参加が進み、 個人が自立を尊重する文化風土からか、結婚・離婚のハードルも低い。
そのため日本では社会保障制度について「自助・共助・公助のバランス」が語られることが多いが、 ここで描かれている社会は(高負担に支えられた)厚い「公助」とそこからこぼれた場合個人の「自助」だけであり、 家族・コミュニティの「共助」は出てこない。

少子高齢化の中で日本の成長の方策として女性の就職支援や高齢者の社会参加が語られるが、 そうやって個人が自立していくにつれ、日本もそうなっていくのではないか。
一方でそれと同時に社会保障において「共助」を柱の一つにするのは、あるべき日本社会のイメージとして期待するの気持ちは分からなくもないが、現実的には無理があるのではないか、とふと思った。


 

コメント
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