友人が面白い、とくれたので。
原田マハは初めて。
スピーチライターという仕事を軸にした、主人公のアラサーOLの恋愛と成長の話、と書くと軽い感じになるし、実際テンポよく読みやすいのだが、折々に出てくるスピーチがいちいちツボをついていて、言葉の力を感じさせてくれる。
政権交代前夜の選挙が舞台になっているのだが、現実の政治家のスピーチは、上からの借り物だったり、型どおりでその場のお約束にのっとって「目黒のさんま」よろしく小骨が(どころか背骨も)抜けてるか、逆にやたら感情的になってるのが多いのだが、ライターを入れるかはさておき、もうちょっときちんと話せる人が出てきてほしい。
本書は2010年8月発行だが、このセリフが既に重い。
「いい?スピーチは魔法じゃないのよ。そりゃあ今回の総選挙はうまくいったかもしれない。でもそれは聴衆がたまたま変革を求めていた時期と選挙の時期が重なって、それを民衆党がうまく誘導できたから。タイミングも、運もあったと思う。私たちが作ったスピーチがすべてを変えた、なんて思い上がらないことよ」