一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『法服の王国  小説 裁判官』(上・下)

2014-03-09 | 乱読日記
エリート司法官僚と現場組という異なった道を歩いてきた二人の裁判官を中心に、
昭和40年代から現在に至る司法行政の変遷を重要な判決・事件、政治や行政との関係
をからめて描いた力作。

裁判官は裁判においては独立とはいうものの、組織の中の一人の人間であり、
その欲望と葛藤と矜持を主人公の二人を中心にした群像劇として見事に描き上げています。

黒木亮といえば経済小説というイメージだったのですが、綿密な取材に裏打ちされたであろう
人物造形と構成はさすがです。

長沼ナイキ訴訟や尊属殺人罪の違憲判決などだけでなく鬼頭判事補の事件なども取り込み、
時代の変遷を判例でなく裁判官自体の変化も交え、奥行きの深いものとなっています。

以前企業法務担当だったときも、何人もの裁判官と接する機会がありましたが、
裁判官の訴訟指揮、特に和解への誘導の仕方の違いは
最初から和解しろと面倒くささ丸出しの人から、落とし所を抑えて絶妙のタイミングで切り出す人まで、
千差万別だったと印象に残っていますが、そんな裁判官の質のばらつきの問題なども言及されているあたりも
個人的にはリアリティあふれる小説でした。


PS
最高裁人事や裁判所内での人事粛清や原発訴訟なども含むこの微妙なテーマが産経新聞の連載だったというのにも驚きました。









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