一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『バグダッド・バーニング』続き

2011-09-24 | 乱読日記
引き続き。
これしか読むものがないということもありますが、感心すること大です。

文化的になじみがない人々の「遅れている」などというときに、実は言っている側の知識が遅れているだけだったりすることはよくあって、日本人もそういう見られ方をされていた(今もされている)にもかかわらず、「欧米目線」になっているときはすぐに忘れてしまうんだな、と気付かされます。

ヤナール(注 アル・ジャジーラの討論番組に出ていたカナダ在住のイラク人女性活動家)は、イスラム教政府は必ずや女性の権利を侵害しようとするから、女性の平等は宗教と分離した政府によってしか達成されないと主張した。私は必ずしもこれに同意しない。もし純粋にイスラムの教えに基づいたイスラム政府というものがあるなら、女性は譲渡することのできない生まれながらの権利ーー教育を受ける権利、働いて稼ぐ権利、自分の意志に基づいて結婚する権利、離婚する権利などを当然保証されるからだ。もちろん女性の服装その他の制限はあるだろうけれど。

イスラム政府がうまくいかないのは、采配をふるう人たちが常にイスラムの名のもとに、イスラムとはまったく無関係で排外主義と関係の深い法や規則を実施するからだ。イランやサウジアラビアを見てごらんなさい。



著者(24歳の大学を出てイラクのIT企業に勤めていた女性、ブログも英語で書いているーー)は、ヴェール(これは少数)だけでなくヒジャーブ(髪と首を隠すヘッドスカーフ)もしていないし、イスラム教でも洋服は「適切」なものであればいいそうです。

近代国家である以上、女性の社会進出や教育制度は必要だということをわすれがちです。
逆に石油一辺倒でオイルマネーでピカピカの都市を作っただけの国の方をおかしいと思うのが正常なのかもしれません。

(余談ですが、本書のカットに著者を思わせるヒジャーブをかぶった女性のカットが載っているのは、本書が女性翻訳者の働きかけで日本語版の出版にこぎつけた経緯があるだけにちょっと残念)


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