一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

”5.11”問題

2006-11-27 | よしなしごと

前にいた会社のアシスタントをやってもらっていた女性が妊娠を機に退職することになったのでランチをしました。

そこで出た話が、彼女の出産予定日は来年の5月なのですが、来年の4月から社会保険の制度が変って給付金がうけられなくなるとか。


後で調べてみたところ、現在の制度は、勤務先の健康保険の被保険者が出産のため会社を休み事業主から報酬が受けられないとき、勤務先の健康保険に1年以上継続して加入し退職翌日(または退職時に任意継続した後任意継続終了時)から6ヶ月以内に出産したときは、出産手当金として標準報酬額の6割に相当する額が支給されます(国民健康保険の加入者は対象外)。
これが来年の4月からは仕事を継続している女性以外は支給されなくなるそうです。
(詳しくはall aboutの「注意!出産手当金の対象者が変わります」参照)


少子化対策が議論される中で、確かに働く女性の出産を支援することは必要でしょうが、出産を機に一度退職して子育てが一段落したら再就職しようという選択も十分自然だと思います。しかも再就職マーケットは未だ大きいとはいえない日本では後者を選択する女性が蒙る不利益に対しても何らかの補助があってもいいように思います。そうしないと無理をして働く女性が増えて、2人目以降の出産のインセンティブにならないですよね。

上のall aboutの筆者も納得がいかなかったらしく、「出産手当金について厚労省に聞きました」という記事も書いています。
そこでは厚生労働省の人は  

この制度は出産を理由にした解雇を禁じる法律も育休制度もなかった頃に作られた制度で、女性が産後も働くといっても解雇されても仕方がないことを勘案して、母体の保護や失業給付の意味合いで、退職後6ヵ月以内の出産や、任意継続による救済の仕組みが設けられた。  
また、制度の目的は仕事を続ける女性の産休中の所得補償で、自発的に「もらってやめる」という人は対象ではなかったのだが、最近は制度の悪用が目立つようになってきた。
そのため、法も整備され妊娠・出産で解雇することは禁じられて、育休制度も作られた現行制度のもとで以前から原則どおりに戻そうといわれてきて、たまたま今年、実施することになった。

と言っています。


さらにこの記事で興味を引いたのが経過措置と「駆け込み」問題。
経過措置では旧制度の対象となるのは2007年3月31日までに出産手当金の受け取りが確定した人までです。
しかし出産手当金は、出産の日以前42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から支給されるので、実際は5月11日(双子以上であれば7月6日)までに出産すれば(任意継続の人は予定日が5月11日以前であれば)退職した人でも旧制度受給資格を持つことになります。
そうだとすると「駆け込み」が予想されますね。

上のall aboutでは  

(筆者) そうなんですか? うーん、この情報を流すと、5月13日予定日の方が、お医者様に11日にして、なんていいかねないですね。  
(担当官) それはできないでしょう。医師のモラルが問われることになります。医師法にも違反する行為です。

と言っています。

しかし、予定日を改ざんするのが医師法違反だとしても、帝王切開とか陣痛促進剤などで出産日をコントロールすることは(病院側の都合としても)結構行われているのではないかと思いますけど、それも倫理や医師法に反するのでしょうか。

実際出生日の数日の違いで数十万円の手取りの差が出るとしたら、がんばって5/11前に産もうという人は増えると思います。 


極端な話、お金に困っている5月12日が予定日の妊婦がいて、出産手当金がなければ産後の生活に支障があるというような状況に直面した場合、母体に影響のない範囲で「便宜を図る」(陣痛促進剤などを使うとか、実際は5月12日の0:30に生まれたものを11日の23:50に生まれたことにする)ことがどの程度「悪い」ことなのかは議論になると思います。
「医師の倫理」は医療行為の適正だけを考えればよく患者の幸福まで射程に入れることはいけないのか、とか、このような行為は詐欺罪として可罰的違法性があるといえるかなど、いろんな論点がありそうです。


個人的には厚生労働省の制度の当初目的を墨守する姿勢については疑問で、「もらってやめる」というのが「悪用」だとしてもそれが子供を産むインセンティブになればいいのではないかとも思いますが、監督官庁であり予算を執行する立場の厚生労働省の担当官の言っていることにも一理はあります。
少子化対策といっても具体的な制度に落とし込むのは難しい、という一例ですね。



とりあえず彼女には

「生むなら5月11日前か双子以上!」

というメールを打っておきました(どんな件名や・・・)。

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