一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『一刀斎、最後の戯言』

2012-03-25 | 乱読日記

数学者の森毅氏の名言集。
森氏と生前親交のあった福井直秀氏がの森氏の数多い著書の中から名言をとりだしてまとめたものです。

最近寝る前に数ページずつ読んでます。
含意が深いのでいろいろ考えをめぐらしてしまうのでなかなか進みません。  

たとえば教育改革について論じているくだり。  

 英才教育なんてのも、いくらか論理的におかしい。制度に縛られずに自分をのばせる、というのが英才の定義のようなものだ。制度で伸ばしてもらうようなものは、英才じゃない。同じようなことは、ヴェンチャー育成というのにもあって、育成してもらうようじゃヴェンチャーにならないとおもうんだがなあ。だから、自由化というのは規制緩和というだけのこと。それはエリートの道かもしれぬが、ハイリスクでハイリターンがエリートで、育成してもらうものじゃない。  
 本当のところは、目的地へ早く着く競争ですらない。大学の研究だって、企業の創始だって、うまい目的は自分で作るもの。与えられたコースのなかで、早く教授になったり部長になったりする競争じゃない。今の時代は、制度でコースが設定できなくなっているから自由化なのであって、そこでコースのなかでの競争しか頭が回らないのでは時代が見えていない。  

人間をその多様性に価値を置いて見る視点がセンの『アイデンティティと暴力』と似ています。      


以前から僕は松下政経塾出身の政治家に対して「政治家になるために学校(塾)に行くって変じゃないか?」という違和感を感じていたのですが、その違和感をうまくいいあててくれています。
「目的地に早く着く競争」を勝ち抜いてきた人たちが、時代の変化にどう対応できるか、というのがまさに問題の今日この頃ではあります。




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