オリンパスの騒動のつづき
昨日オリンパスが一連の報道に対する当社の見解についてという適時開示をしましたが、これがまた突っ込みどころ満載です。
1.当社が同士の解職を決議した経緯について
これはオリンパスの従来からの言い分を書いてあります。
問題はつぎ。前社長が疑義を持ったM&A取引に関してです(下線は筆者)
2.M&A案件に関する一部報道に対する当社の見解
(1) Gyrus Group PLC(以下「ジャイラス社」)買収におけるフィナンシャル・アドバイザー(以下「FA」)への支払いについて
① FAとの当時の契約の概要
FAの業務内容:1.M&Aターゲットの提案
2.M&Aトランザクション推進のためのチーム編成と運営管理
3.トランザクションの最適ストラクチャーの設計、提案
4.トランザクションに必要な分析、評価、交渉および必要な
関連サービス
契約締結日:2007年6月21日
支払い金額:基本報酬 500万米ドル
成功報酬 買収金額の5%
(ただし買収金額に応じて所定の範囲で変動する)
内、現金15%(ただし上限1,200万米ドルとする) オプション85%
(ただし現金の上限超過部分はオプションに加算する)
ワラントの付与
※上記報酬にはFAを通じて外部に委託する法律関連等の費用も含む。
② FAに対する支払いの金額およびその内訳
2006年6月16日 基本報酬 300万
2006年6月18日 基本報酬 200万
2007年11月26日 成功報酬(現金) 1,200万
2008年9月30日 ワラントの買い取り 5,000万
2008年9月30日 オプションの買い取り 17,698万
(以上FA報酬)
2010年3月31日 優先株の買い取り 44,302万
(優先株の値上がり分)
支払合計 68,700万
③ FAから取得した優先株の詳細について
発行経緯:資本参加を希望するFAの要請によりジャイラス社の優先株を発行
発行主体:Gyrus Group Limited (Gyrus Group PLCの変更後社名)
発行時期:208年9月30日
発行価格:1億7,698万米ドル
買取価格:6億2,000万米ドル
④ FAから優先株を取得した経緯
ジャイラス社を当社の100%保有とするため、FAに発行した優先株を2010年3月31日に6億2,000万米ドルで買い取りました。買取金額は双方の時価算定の中間値(当社は第三者による算定)によって決定しております。
⑤ その後のFAの状況について
当該FAと当社との取引関係は優先株の買い取りをもって終了しておりますので、当該FAのその後の状況については当社では認識しておりません。
⑥ ジャイラス社の買収に関する当社の認識について
本件買収により、成長を期待される外科事業における当社ラインナップを強化することに加え、ジャイラス社の得意とする米国での販売網を拡充することができ、当社の企業価値の最大化に大きく貢献すると判断しました。買収金額については、デュー・ディリジェンス等を通じてジャイラス社の資産内容、事業内容他潜在的シナジー等について総合的に検討を重ねた結果、妥当な金額であると判断しました。
⑦ ジャイラス社の買収に係る決議に関する監査役の意見
監査役全員一致の見解として、「取引自体に不正・違法行為は認められず、取締役の善管注意義務違反および手続き的瑕疵は認められない」との結論に至っております。
そもそもFAに成功報酬を大きくしてにぎった上で「ターゲットの提案」「分析・評価・交渉」まで任せたら、FAとしては手っ取り早く買えそうな会社を見つけてきて割高な評価をして緩めの交渉をしようというインセンティブが働くはずです。
そこで報酬として買収先の株を持たせれば利害が一致すると考えたのかもしれませんが、FAがもともとそっちはおまけと考えられていたら意味がありません。
それに、買収して1年半後には100%保有にするためにFAから買い取っているわけで、当時からそういう約束があった(またはその意図を見透かされて足元を見られた)と思われても仕方ありません。
当初そういう意図がなかったとしたら、買収1年半で(交渉期間を入れれば実質1年くらい?)いきなり資本政策を変更した理由が知りたいです。
取得価格にしても、オリンパス側は第三者評価をしたと言ってますが、相手の根拠不明な評価額(言い値?)との中間値で買ってるというのはかえって言わない方がよかったと思います。
しかも、FAが何者かについての言及がないところも怪しいです。WSJによればタックスヘイブンに籍のある会社だとかで、そのへんの説明がないのは反論としては弱いです。
百歩譲ってやましいところがなかったとしても、相当脇が甘い感じです。
⑦については、今回改めて意見を求めたのか、当該取引の年度にかかる監査報告書について言及しているのか不明なので、記載の趣旨がわかりません。
今回監査役が独自に調査したのであれば、その報告書自身を開示したほうが説得力があると思います。
つぎに 別のM&Aに関する論点
(2) 株式会社アルティス(以下「アルティス」)、NEWS CHEF株式会社(以下「NEWS CHEF」)および株式会社ヒューマンラボ(以下「ヒューマラボ」)買収およびその後の減損処理について
2006年5月から2008年4月にかけて(段階的に?)買収した3社(住所が同じで業種がばらばら、しかもオリンパスの本業とも関係なさげ、という時点で胡散臭い感じです)について2009年3月期に「リーマンショック等により外部環境が悪化したことを考慮し、保守的に減損処理を行なった」としています。
減損処理金額は
アルティス NEWS CHEFF ヒューマラボ
買収総額 288億12百万円 214億8百万円 231億99百万円
減損処理額 196億14百万円 176億99百万円 183億70百万円
と、それぞれ70%~80%も企業価値が減少しています。
算定方法の当否についてはよくわかりませんが、いくらリーマンショックがあったとはいえ、3年前から前年まで株を買い進めていて、当然財務内容には精通していたはずの会社が一気に企業価値が1/4~1/5になるのは解せません。
しかし当時の適時開示はさらっとしたもので、「リーマンショック」にも言及していません。
これについても「監査人全員一致の意見」が出てきますが、手続きが適法だからといって経営責任(善管注意義務違反でなく経営者として適任でないという点で)を問う声はなかったのでしょうか。
ちなみに、いちいち引き合いに出される監査役について、有価証券報告書を見ると、社外監査役2名は菊川現会長兼社長が当初社長になって最初の監査役改選期に就任した人で、奇しくも同い年(早生まれ等で学年は違う人が1名)。
いずれも他の企業の役員等をやっていたサラリーマン上がりの人で監査の分野に専門性がある感じではありません。
社長の同級生とかじゃないだろうかとググッた範囲でわかったことは、島田誠氏は菊川氏(経歴はこちら)と同じ慶応大学法学部卒ですが卒業年次は2年違い(ここの3ページ目上段の記事参照)、中村靖夫氏は北海道大学理学部出身(こちらの下のほう)のようです。
中村氏は合成繊維の研究をしていた人のようで社外監査役としてはやはりちょっと異色な感じがします。
「違法ではない」ということを強調したいがためにM&Aの下手さを詳細に述べて突っ込みどころを増やすという展開が味わい深いですし、まだ黙っていることも多そうで、今後もいろいろ出てきそうです。
お鉢を回された監査役あたりが次のキーになるかもしれません。
経済関連のネタだったので、触れていらしているかなと思い、
早速読ませていただきました。正直素人なので、事の顛末が
見えてないんですけど、結局、過去の表沙汰に出来ない金を
無理やり表側の金に見せかけようとして失敗したのかな?なんて
見ていますが、どうなんでしょ??
FBIが操作に入るなんて話も出てきてるので、ネットの無責任な
噂では、上場廃止まで行くんじゃ…なんて話も出てますが(^^;
金があるといえば、我が家のティッシュペーパーが大王製紙のエリエールだったので、鼻をかむのにも複雑な心境の今日この頃です。
オリンパスの件は、単に金持ちで脇の甘い経営者がFAに食い物にされたのか、FAを通すことで会社を食い物にしたのかが今後明らかになってくると思います。
本件が明らかになる前に、人間ドックで苦しい思いをしてオリンパス製の胃カメラを飲んでいてよかったです。
この金を開発に振り向ければもう少し楽になったのではとか考えたくないですからw