社会のド底辺で暮らす人々を描き続けるベルギーの至宝ダルデンヌ兄弟監督。その作風は台詞は少ない、画面がブレる、ドキュメンタリータッチ、いっさい音楽がない(最近はそうでもないが)等。ハリウッドの超大作を見慣れている人には全く面白くないような映画を撮り続けているが、今や世界を代表する名匠として注目されている存在だ。
そんな彼らの個性が特に出ている作品が今回紹介する息子のまなざし。ストーリーは静かに進み、殆どのシーンが不細工なオッサンのドアップばかりなので観ていて苦痛に感じる人が多いだろう。前半はオッサンが部屋を出入りしたり、階段を上ったり下りたりするシーンばかりで、しかも説明なんか全く無いので観ていて何が何だかわからない。しかし、このオッサンの一言を切っ掛けにがぜん盛り上がる。それでもストーリーのテンポは変わらないのだが。
早速だがまるで冴えないオッサンと、訳ありの少年の静かだが奥の深い交流を描いたストーリーの紹介を。
表情は暗く、ユーモアの欠片も感じさせないオリヴィエ(オリヴィエ・グルメ)は職業訓練学校で大工仕事を教えている。ある日のこと、フランシスという少年が大工仕事を希望して入ってきたのだが、彼の履歴を見たオリヴィエは手一杯であることを理由に断る。
フランシスは溶接の方に回されるのだが、注意深く彼を見ていたオリヴィエは急に心変わりをしてフランシスを大工仕事の方で引き受けることにした。実はオリヴィエとフランシスの間には驚く因縁があったのだ・・・
それにしても何でこのオッサンはこんなに暗いのか!その理由を明快に知らされた時に観ている我々をショックのどん底に叩き落とす。そりゃ~、誰だってこんなオッサンの状況になったらニコニコなんかしてられない。そしてこのオッサンと少年が二人きりで車を走らせながら、オッサンが少年に短い会話をしかけるが、大して盛り上がらないのにチョットばかりスリルを感じたのは何故だろう。
そして観終わった後は、色々なテーマが隠されていることに気づく。人間は他人をどこまで許せるのか、復讐の是非を我々は問いかけられる。更に、大して明るい未来が見えなさそうな社会的な弱者に対して優しさを感じさせるのが良い。この先も大きな悲しみを背負って生きる人間、そしてこの先も罪を背負って生きる人間に少しの希望を感じさせる。
そして、ダルデンヌ兄弟監督の作品の特徴でもあるのだが、中途半端で終わるようなエンディング。いきなり終わってしまう印象があるが、観ている人に色々な感情を思い起こさせるエンディングだ。そして、何だかド素人が撮ったような映像に見えたりするが、実は大工道具が非常に色々な役割、メタファーを感じさせる映画だったことに気付いたときに、この映画の凄みが多くの人に理解されるだろう。
ダルデンヌ兄弟監督作品と聞いて心が躍る人、ド派手に感動する映画よりもシミジミと後から感動がくる映画を観たい人、音楽が全く流れない静かな映画を観たい人等に今回は映画息子のまなざしをお勧めとして挙げておこう。
監督は前述したように今や世界的に名匠として知られるジャルデンヌ兄弟。個人的に非常にお気に入りの監督さんで、社会派作品の映画が好きは人はハマる人もいるだろう。父親の駄目っぷりが描かれているある子供、国籍売買が描かれているロルナの祈り、どうしようもなさそうな少年を描いた少年と自転車がお勧めです。
そんな彼らの個性が特に出ている作品が今回紹介する息子のまなざし。ストーリーは静かに進み、殆どのシーンが不細工なオッサンのドアップばかりなので観ていて苦痛に感じる人が多いだろう。前半はオッサンが部屋を出入りしたり、階段を上ったり下りたりするシーンばかりで、しかも説明なんか全く無いので観ていて何が何だかわからない。しかし、このオッサンの一言を切っ掛けにがぜん盛り上がる。それでもストーリーのテンポは変わらないのだが。
早速だがまるで冴えないオッサンと、訳ありの少年の静かだが奥の深い交流を描いたストーリーの紹介を。
表情は暗く、ユーモアの欠片も感じさせないオリヴィエ(オリヴィエ・グルメ)は職業訓練学校で大工仕事を教えている。ある日のこと、フランシスという少年が大工仕事を希望して入ってきたのだが、彼の履歴を見たオリヴィエは手一杯であることを理由に断る。
フランシスは溶接の方に回されるのだが、注意深く彼を見ていたオリヴィエは急に心変わりをしてフランシスを大工仕事の方で引き受けることにした。実はオリヴィエとフランシスの間には驚く因縁があったのだ・・・

それにしても何でこのオッサンはこんなに暗いのか!その理由を明快に知らされた時に観ている我々をショックのどん底に叩き落とす。そりゃ~、誰だってこんなオッサンの状況になったらニコニコなんかしてられない。そしてこのオッサンと少年が二人きりで車を走らせながら、オッサンが少年に短い会話をしかけるが、大して盛り上がらないのにチョットばかりスリルを感じたのは何故だろう。
そして観終わった後は、色々なテーマが隠されていることに気づく。人間は他人をどこまで許せるのか、復讐の是非を我々は問いかけられる。更に、大して明るい未来が見えなさそうな社会的な弱者に対して優しさを感じさせるのが良い。この先も大きな悲しみを背負って生きる人間、そしてこの先も罪を背負って生きる人間に少しの希望を感じさせる。
そして、ダルデンヌ兄弟監督の作品の特徴でもあるのだが、中途半端で終わるようなエンディング。いきなり終わってしまう印象があるが、観ている人に色々な感情を思い起こさせるエンディングだ。そして、何だかド素人が撮ったような映像に見えたりするが、実は大工道具が非常に色々な役割、メタファーを感じさせる映画だったことに気付いたときに、この映画の凄みが多くの人に理解されるだろう。
ダルデンヌ兄弟監督作品と聞いて心が躍る人、ド派手に感動する映画よりもシミジミと後から感動がくる映画を観たい人、音楽が全く流れない静かな映画を観たい人等に今回は映画息子のまなざしをお勧めとして挙げておこう。
![]() | 息子のまなざし [DVD] |
オリヴィエ・グルメ,モルガン・マリンヌ,イザベラ・スパール,レミー・ルノー | |
角川書店 |
監督は前述したように今や世界的に名匠として知られるジャルデンヌ兄弟。個人的に非常にお気に入りの監督さんで、社会派作品の映画が好きは人はハマる人もいるだろう。父親の駄目っぷりが描かれているある子供、国籍売買が描かれているロルナの祈り、どうしようもなさそうな少年を描いた少年と自転車がお勧めです。