春の太陽が強さを増すこの頃の雨は、五穀の成長に天の慈雨と言う意で、穀雨と呼ばれる。毎年、四月二十日頃である。折りしも日中に、音もなく降る雨。フェンスの外の麦も、背丈を伸ばしている。リナリアと一緒に風に揺れている。
残飯を捨てに行くと、野良猫が居座っている。機械の電源が入っているので温かいらしい。然し丁度蓋の処に居るので残飯が捨てられない。仕方なく、バケツの蓋で突いてどかす。白猫だが、汚れて生成りになっている。黒猫でない。
以前に見た時は、まだ小さかった。あれから年数も経過している。団地住居では、連れて帰れない。況して成猫とあれば尚更、自宅に居ればどうとでもなるが、留守の間にどえらいことになるのは必須。損害の大きさを考えれば・・・。
銀河は、枇杷茶を飲みだして、体の臭いが消え、猫独特の尿臭も薄くなった。シャンプーは猫専用だが、掛けるのは枇杷湯だった。何度も洗う内に、匂いにも慣れたようだったが、嫌いなことは本能であろう。毎回、大騒ぎをしていた。
今朝の寒さを思えば、湯たんぽを忍ばせておく。銀河は寒がりだったから、膝に上がって来、毛布に潜っていた。一寸温かくなると、頭だけ出して来て、眠りこける。相当の重さになり、足が痺れることも。今も時々、ずしっと重く感じる。
テレビに岬の高台のお社が映った。思わず、赤い蝋燭と人魚を思い出す。えっ、知らない?小川未明だよ。ごんぎつねは?てぶくろを買いに、よだかの星、それって、学校の教科書で習ってない?知らない、覚えてないって嘘だわ。
宇宙人の宿題、おみやげ。小松左京に星新一を知らないの?空中都市008に至っては、サイボーグ009と一緒くた。そりゃ、石森章太郎だろう。次元の低さに、会話の糸口が切れてしまう。物を知らないというのではない。忘却だ。
この程度で、本を読んでいると言うのだから、じゃあ、一体読書というのは何?知識を広めること。知恵を働かせ、勇気と希望を持つ、努力を重ねるということ。人間としての根本に、学ぶ姿勢を続けたい。介護の仕事は幅広いのだ。
玄関の向って右の場所に植えた枇杷苗。発芽したままで、移植をしていないため、大きくなっていない。