ちょいと前のおウワサ。
大阪堺の実家近くに蕎麦屋ができたと聞いていて気になって気になって…。
あの、田舎のわが故郷に蕎麦屋とな?蕎麦なんか食べる顔しとれへんがな…あ、まちがい、顔やない。
蕎麦を食う文化なんか不毛の地だとばかり思っていた。 時代は変わり始めていたのだ。
JR津久野駅から5分ほど、デイリーカナートの裏道にある。
白を基調としたきれいな店舗。 屋号のいんなーとってナニ…?生まれついての…?
友達たちと待ち合わせ。 ひと足先に来た私は、お酒を所望。
銘柄は忘れましたが、美酒でした。
それにしても、津久野で蕎麦屋をひらくなんて、かなりの冒険。
飲み屋だってそうはない場所です。
ボクが故郷を離れ、東京に出た頃、寿司・蕎麦・天ぷら・トンカツ・ラーメンは
東のものという思いが強く、蕎麦屋なんてできたらいいなと思いながらも、ほぼ諦めてました。
手打ちそば、手打ちうどんと看板に掲げていても、ウソばっかりの店だらけでした。
いい時代になりましたな。
一茶庵系の焼き味噌でなく、この赤味噌を使った江戸前風のそば味噌はこの頃、珍しい。
酒にも合う。ただ味が濃いだけに、一人分としては持て余し気味。
なんかこれをつつき合うってのも汚ねぇ絵ヅラだしな。
「並木藪」や「まつや」みたいに小皿にちょこっとにして安くしてくれりゃ、ありがてぇ。
あれこれ頂きたいが、ここはベーシックなせいろを。
蕎麦は国内産の丸ヌキを仕入れての石臼挽き、自家製粉による十割蕎麦。
色白のすがすがしい色をしていて、香りも温度も申し分なかった。
新そばの時分はうす緑色になるんでしょうかね。
つゆがちょっと甘めに感じました。アタシはどっちかってぇと、辛めのキリッとした派だもんで。
みょうがそば みょうがとすだちの合わせ技。
みょうがを刻み、立ててあるのが面白い。上品。
この上品さ、津久野で大丈夫か。
辛味大根のおろしそば。削りかつおが添えられてくる。
温かいのも食ってみたかったが、そいつはまた後日。
たとえばうちの親爺なんてのは、東京っ子のくせに冷たい蕎麦を受け付けない。
熱いので行きたいが、鴨が苦手なんで食えるものがなくなっちゃう。
なので理想とは違うかもしれないが、熱いそばをおいしく食べさせる種ものを
出すってのはどうだろう。 藪系みたいにハシラとか芝エビで小さなかき揚げこさえて、
天ぷらそばにするとか。面倒だろうけどね。
どうも、お蕎麦屋さんにありがちなんだけど、いい蕎麦の実を求めて全国あちこちの
蕎麦を使って、合わせる具材も全国のものを吟味したりすると、
えっと、オレは何処で食べてるんだっけ…という気になる。
せっかく堺にあるのだから、堺の色を加味したらいかがだろうか。
堺は元々「金露」なんてブランドもあった酒どころ。堺の酒復興を夢見た「夢衆」なんて地酒もありまっせ。
そば湯もまことに結構。
そうだ、泉州の小ぶりの穴子を天ぷらにしてみたらどうだろう、トビアラなんかもあるし。
この先、駅の向こうにある雨風醤油とコラボしてみるっていう方法もあるだろう。
もろみはちょっとした酒肴にもなるだろうし。 柚子酢もいいそうですぜ。
今やよそ者となった自分には、そういうリージョナルなものに妙に惹かれるのだがなぁ。
かえり際に聞いたら、ご主人の稲富さん、中学の先輩だった。 先輩がんばれ。
オマエに言われなくても頑張ってはるわ…さよか。
接客はさりげないが、津久野でやる限りはもう一歩、客に声かけて熱意を伝えてもいいのかもしれない。
まだまだ蕎麦の楽しみ方は知られてないでしょうからね。
順調にそこそこ儲けてもらわない限り、我々の仲間はこの先も安心して楽しめないのであって。
いんなーと・みやびの 堺市津久野町2 駅から5分。 ミスドの裏道をまっすぐ。