玉子屋といえば、上方芸能の中に二人。
ひとりはオール阪神巨人の巨人さん。
もう一人は、横山エンタツの師匠といわれる玉子家円辰さん。
さらに、ゆで卵の板東英二。この3人をもって上方玉子の三傑という。
まぁ他で言わないように。
次から次へと玉子焼きが出来上がって行く。
玉子焼き工場の中は、玉子のいいニオイが充満していた。
こっちは焼き立ての本玉。本玉は、上下を6回返すことになり、6層の玉子となる。
機械で作ったものなんて、おかしくて食えるけぇと思うかもしれないが、どうしてどうして、美味!
玉子焼きのことを勉強させていただきに、JR神戸まで。
全身着替えてエアーシャワーを浴びて、工場内に入らせていただく。
こちらは細めのだし巻き。 玉子の色だけで、このあざやかな色。
本来は冷まして頂くものだが、アツアツを切ってもらうと、ふんわりとし、
口の中ヤケドしつつ、熱さの向こうに玉子とだしが姿を現す。 うめえ!
湊川神社の西側にある、玉子焼き専門メーカー「山田製玉部」さん。
すごいでしょうが、この屋号が。「セイギョク」ですよ。
湊川神社西門前。 玉子焼きひと筋でこのビルが作れるなんて、すごい!
そもそもは大型寿司店には板前、煮方などと一緒に、玉子ばかりを焼く製玉部というパートがあった。
そこだけが独立した形で、この名を冠した玉子屋があちこちにあったそうだ。
みんなシャレたなんとかフーズとか、なんちゃらカンパニーとかCIする中、ここだけが頑固に屋号を残したので
今では珍しくなってしまったちゅうわけ。人生何が幸いするかわからない。
こちらは厚焼きの機械。 階上の生地を作るラインで石臼で練り込まれる生地(ネタと称する)。
鍋の下にガス火があり、ゆっくりと流れていく。 この火加減が難しいらしく、
季節や天候に応じて、変えて行くのは熟練した職人の技。
その日の始業時に必ず試し焼きがされ調節される。
少し甘めのふんわり厚焼き玉子。
白身魚のすり身が入るので、こんがりとキツネ目、おっとキツネ色に色づく。
ふわっとした口どけは、卵白をメレンゲにして加えるからだ。
低反発まくらのようでもある。こういうふかふかの布団をかぶって、昼寝してみたい。
こちらは錦糸卵のライン。
熱を持つローラーに玉子生地が落とされ、薄手の一枚の反物みたいに出来上がる。
一度でいい、バスタブいっぱい錦糸卵を入れて、その中に裸で入り、潜って口いっぱい頬張ってみたい。
別厚というのを作るラインは、この日は稼働せず。
一枚焼くのに20分~30分かかる。
名前を出して悪いが、すきやばし次郎などで小野次郎さんが1時間だかかけて焼く、あの厚焼きだ。
完全手焼きラインも残していて、今も新商品の発注などには手焼きで試作したり、
そこで完全に手焼き出来るようになってから、機械のラインを任されるようになる。
自分の手で巻けるようになって初めてイロハのイに立てるということなのだろう。
50年から勤める現役社員がいて、
「これは最高というのにはまだお目にかかりません。常に研究です」といわれた。
単純だけに深いものだ。
本来は寿司屋の黒子だったため、表に立つことはなかったが、
最近では「山田製玉部製」というのがブランドになり始めている。
長年、生真面目に作り続けて来たのが評価されたわけで、こりゃモチベーションも上がる。
自社ビルの一階にも売り場があって、各種の玉子焼き、巻きずしの具なども取り扱っている。
味は限りなく手焼き。 神戸に山田製卵部あり。ひと筋にやってきた凄みを味わいたい。