いよいよ、ロンドンへ帰る日が来た。バスの時間を確認すると、8時10分発だ。悪いが、朝食を7時45分に早めてもらう。昨夜、B&Bのオーナーは、もし時間が間に合わないようなら、バス停まで、車で送りますよ、といってくれていた。
実際、朝食が終わると8時を少し回っている。オーナーが手回しよく、重いスーツケースを車に積んでいただいたので、時間通りバス停に着くことができた。
そこでオーナーにお礼を言い別れる。バスは遅れてやってきた。月曜の朝なので、学生が多い。それも、学校の中まで生徒を送って行ったのには驚いた。
ウインダミアにはほぼ時間通りに着く。
ロンドン行きは一人£82だった。列車は、ケンダル(おちゃさんから、できれば立ち寄って紅茶を飲んでくださいと言っていたが)を通過した。
オクセンホルムで乗り換えの列車を待っていると、ロンドン行きの列車がやってきた。
どこでもいいかと乗り込むと、すべての席に食事の用意がセットされていて、しかも座席の幅が広い。これは少しおかしいなと思って、よく見てみると、そこはファーストクラスの車両だ。これはヤバイと車両を移動するのだが、ごろごろとスーツケースを引きながら通られたのでは、さぞやファーストクラスの客も迷惑だったであろう。
やっと、普通車両に着いて座る。ところが荷物の置き場所に困り、最初は座席に置いていたが、だんだん混んできたので、荷物置き場にぎゅうぎゅう詰めてみると、うまくはまったのでほっとする。大きなスーツケースは良し悪しだ。
3時間少しでロンドンユーストン駅に着いた。ユーストン駅は新しい。ここでも改札口はなかった。ホテルは、そこから歩いて10分くらいのところにあったので助かる。
ホテルの受付でアクシダントが起こった。予約確認書を提出したのに、名前がないというのだ。受付の女性がいろいろな方面に、電話をかけて確認しているが、どうも私たちの予約が入っていないとの返事ばかりのようだ。
挙句には、いつ予約しましたか、などと聞かれる始末だ。ずーと前の5月だと、答える。向こうも処理に困っているようだが、まさか私たちを追い払うことはできないので、なんとなく、しぶしぶの雰囲気で、「このペーパーに名前を書いてください」と、言い出した。私は、「何でこれだけ時間をかけねばならないの」ときつくいうと、「名前がない」の一点張りだが、私の怒りにも気がついたのであろうか、対応がだいぶ柔らかくなった。やれやれである。
荷物をホテルに預けて、今日の午後は、キューガーデンに行くことにする。その前に昼食をとろうと考えて歩いていると、丁度そのとき、ビルの下が中華料理店だったので、早いほうがいいと、ここで食べようということになった。
先日のテイクアウトで懲りたので、わかりやすいチャーハンと麻婆豆腐にする。味は、まあまあで、さすがロンドンの中華料理はおいしいという噂は違わなかった。
ピカデリーサーカス・ラインに乗って、ハマースミスでデストリクト・ラインに乗り換え、キュー・ガーデンズ駅で下車。歩いて5.6分ぐらいのところだ。
キューガーデンの中は、本当に広い。大英帝国が、その力にまかせて全世界から集めるだけ集めた植物が、所狭しと植えられている。
最初、西側から回りだした。このエリアは、樹木のエリアだ。ありとあらゆる樹木が集まっている。しかも、植えられてから、相当の時間が経っているのでいずれの樹木も巨木となっている。ハクウンボクによく似た木が花を咲かせているが、その大きさたるや、びっくりするぐらいに大きい。
ところどころに、巨大に温室があり、そこには熱帯植物や古代の植物が育てられている。あるいは、栗の巨木のあるところでは、30メートルぐらいの回廊が設けられていた。
少し歩いていくと、樹木の間から不思議なものが見えたので、近寄ってみると孔雀だった。
中央の温室とその前の空間、池と噴水が美しい風景を形作っている。西側はバラ園になっていた。さぞや満開のときは圧倒されるであろう、が、今日は、半分以上のバラが散ってしまっていて、残念だった。そこを通って、東、北側を回る。赤茶色のレンガの壁で仕切られているエリアには、さまざまは花が植えられている。壁には、各種のクライミング植物が壁に沿って登っている。
更に北に行くと、ロックガーデンがあったり、砂漠植物が植えられていたり、あるいはグラス類ばかりが集められていたりと、本当に見飽きることがない、全部を見ることすら不可能なぐらいの植物園だ。これが、イギリス王室の名前で、市民に提供されている。どこの国とはいわないが、大きな違いを感じた。
6時を回ったので、植物園を出る。来た道を帰り、夕食を食べに、レスタースクウエアで下車する。出てみると、びっくりするほどの人手だ。今夜は、せっかくだから本格的なイギリス料理のレストラン「IVY」に行こうと思う。ガイドブックには、予約したほうがいい、と書いているが、しなければならないとは書いていなかったので、何とかなる、との思いで、探していってみると。ディナーはできませんと、体よく断られた。
仕方がないので、西側のチャイナタウンに続く道を歩く。入りやすそうな中華料理店が軒並みに並び、店先で、飲んでいる人が多い。それなら、イギリス料理にこだわることはない、中華料理でいこう、と芸のない判断に傾いた。近くの店に入り、中華丼とビールを頼む。イギリス最後の夕食が妙に、つまらないものになってしまった。しかし、あの人通りの中を歩くのも、しんどいのでやむをえない。中華丼は、薄味で、実においしかった。それならと、食べやすそうな、焼きビーフンを追加する。
これも、ピリッとしたいい味だった。店を出てから、中華街の中に入っていくと、角の店で、餃子という文字が目に飛び込んできたので、入ってみる。どうも焼き餃子がありそうだが、はっきりはしない。
注文して待つこと10分、出てきた餃子は、水餃子で、非常に分厚い皮だ。ビールを注文すると、ここではアルコールは出さないとの返事。拍子抜けしたが、取り合えず、分厚い水餃子を食べて店を出る。しばらくいくと、今度は「TOKYO」という文字が飛び込んできた。
これは、と思って覗くと、すし屋さんだ。残念!、もうお腹がいっぱいで食べることなどできない。まあ、寿司は日本に帰れば、いくらでもおいしいところがあるので、惜しがる事もないだろう。
こうして、ロンドン最後の期待していた夕食は、実にあっけないもので、終わりになった。くたくたになったのでホテルに帰るとすぐにダウンした。