4日かけて少しずつ読みました。図書館へ立ち寄った際、目的の著書が貸出中であることを確認後、
「では、今回は、違う作家さんの著書を読んでみよう!」と思い、小説コーナーの端から順にタイトルを見ていきました。
その時、目に留まったのがこれ!という訳です。ここ数か月間、好んで読んできた明治の文豪、夏目漱石の著書から、ちょっと離れて…のつもりだったのに、坊ちゃん!
ただね、この小説の著書は、夏目漱石ではないのです。奥泉光(おくいずみ ひかる)氏 1956年生まれというから、私より8歳上。今日まで存じ上げておりませんでしたが、昭和生まれの芥川賞作家です。
本のタイトルからも分かる通り、時代は幕末。ちょうど今の大河ドラマと同時代ですね。
これまでも、『花燃ゆ(長州側)』 『篤姫(薩摩・幕府側)』 『新選組(壬生浪士組・会津・幕府…その他諸々)』『龍馬伝(開国派)』
過去10年余りの間に、これだけ幕末が大河ドラマで取り扱われた訳です。会津藩の女性が主役の大河もありましたね。(タイトルが思い出せないのですが…)その都度、討幕派だったり攘夷か開国か?だったり、立場を変え、目線を変え、あくまで大河”ドラマ”なので、史実とは異なるにせよ、毎回、楽しんでいる私です。
今回、手に取った本は、私の予想に反し、坊ちゃんの祖先は忍者だった!という話ではなく、実際のところ、漱石が描いた坊ちゃんとは何の関わりもありませんでした。最初の数ページを読めば、「はは~ん」と思うのですが、文体が漱石の「坊ちゃん」にそっくりなのです。出羽の国から江戸を目指した筈だった坊ちゃん忍者、松吉は、寅太郎という名の幼馴染に誘われ京へ。寅太郎は、その都度、状況に応じ態度を変える…言ってみれば、『あっちこっちに付く派』
坊ちゃん忍者、松吉も寅太郎も、新選組の土方歳三や沖田総司と出会い、はたまた坂本先生(恐らく龍馬)や伊藤さん(博文?)らと関わりを持っていきます。忍者の修行かと思えば、実は医者を目指し勉強する坊ちゃん。
「坂本先生によると、腹を切って責任を取るというのは、これからの時代、もう古いそうだ。」といったようなセリフも出てきます。龍馬なら言いそうな台詞です。松吉の目を通し、まるで自分が当時の京で混乱に巻き込まれた庶民のような気持ちにさせられます。後の大まかな歴史を知っている読者である自分が、もしも当時のこと、この混乱の先に何があるか‼? 知らずに日々の暮らしを営んでいたとしたなら… 京から すぅ~っと、現代のスクランブル交差点に迷いこみ、京都タワーの上から眺めたら… 現在の修学旅行生まで登場する歴史ファンタジーです。
そう、歴史って何だろう? と、ちょっと真面目に考えたり。
夏目漱石の文体であったり、『坊ちゃん』の登場人物の、あの人に相当する人って、この人かな?
パラレルワールドだ~と現在と過去を行き来した気分になって笑ったり。
一冊で、あらゆる楽しみ方が出来る、そんな小説でした。