伯林的管弦楽団演奏会の帰り、八幡図書館へ立ち寄った。入り口付近にクラシックコンサート、特にピアノにちなんだ著書をまとめて展示してある。これはなかなか洒落ているなぁ~と感激し、「初心者向けピアノの弾き方」や作曲家にまつわる話や小説を手に取って見た。その中の一冊が、【三月は深き紅の淵を】だ。作家はピアニストに関する映画の原作を書いた、というよりは小説が映画化されたと言った方が正しいよね、恩田陸さんだ~!友人の勧めで数年前に読んだ『夜のピックニック』を始め、ミステリー作品を何冊か読んだことがある。 このコーナーに置いてあるということは、当然、音楽やピアノに関わるストーリーなのだろう。今の自分はコンサートを聴いて高揚気味。まさにピッタリな本だと思い、喜んで借りて帰った。
ネタばれしないよう、必要最低限に紹介すると…
鮫島巧一。彼が第一章の主人公。第一章の…、というのも、この本は4部構成で、カルテットのように第4章まであり、それぞれ主人公も違えば場所も登場人物も違うからだ。鮫島巧一の趣味は読書。ジャンルにこだわらず、小説は勿論、雑誌も何でも読む。そんな彼が勤め先の社長の屋敷に招待され、謎解きに参加させられるという話だ。 どこかで似たような話を… そう、『謎解きはディナーの後で』だったな、と思いながら読み進めると、当初、この本に対して抱いたイメージとやらは、どこかへ吹き飛んでしまい、あっという間に鮫島氏と一緒に何がどうなっているのか、考えた。 いや、考えさせられたというべきかな。
『自費出版で200部が世に出たものの、その直後、謎の男が回収して回る。この本を借りた人は、必ず1日で読み終え返却しなければならない、という約束があるらしい。 さて、その謎の本がこの屋敷に隠されているのだが、何処にあるのか!?』これが屋敷に招待された鮫島に向けられた『解くべき謎』だ。
これだけでも面白いのだけれど、第二章になると、はて?作者はどんな人? 女性? 男性? 何処に住んでいる? これが第三章になると、再び場面が一転! 女子高生が二人、死体で発見され…自殺?他殺? 一体何が? そして謎の本との関連は?
早い話、目が離せない。先が知りたい、だから読むスピードは増す、だけど思考を巡らせる分、じっくり味わえる。この本は音楽にちなんだ話ではない。 ミステリーじゃないのぉ~! 騙されたかも、私、とも思った。誰かが悪戯であそこへ置いたのか? それとも元の本棚にしまうのが面倒で、ぽつんと置かれたのかな?とも。
すべて読み終えた今は、カルテットのような4部作の本! ということで、あえてあのコーナーに入れたのかな? 著書に詳しい司書さんらしいなぁ~と思う。自分にとって、ここの部分が最も大きな『謎』となった、そんな
「ピアノクラシックコーナーに そっと置かれていた本」
あなたもコーヒーでも飲みながら是非、ご賞味あれ!