つばめ君の初出勤の日、私はオフだった。
そこで、彼に会ったのは、その翌日・・・とあいなった。
この日は、つばめ君にとっては、仕事二日目。
乾物の入荷日だ。
乾物の台車を引っ張り、売り場へ行くと、つばめ君が、カップラーメンの荷出しをしてくれているところだった。
お互い、初対面である。
「はじめまして~。鈴木といいます。宜しくお願いします」
私が声を掛けると、つばめ君は、手を止めて、顔を上げた。
「包です。宜しくお願いします」
「包み・・・くん。(でも、つばめ君と呼ばせてもらおう。命名したのは、南副店長だけど・・・)」
二人で荷出しをしながら、話をした。
「もう、ここのスタッフには会った?」
「はい、昨日の朝。おばちゃんたちに・・・」
どうやら、卒倒したりはしなかったようだ。
良かった。
「いつも、こんなに荷物、たくさん入荷されるんですか?」
すでに、荷物の山に、うんざりした様子だ。
「そうね、いつもより、ちょっと多目に発注したけど・・・」
すると、つばめ君は、急に驚いた顔になり、叫んだ。
「えーっ 発注とか、するんですか ここでのバイト、長いんですか?」
発注・・・と言う単語に反応した。
まっ。気持ちは分かるけど・・・。
私も最初は、入ったばかりの私に発注任せていいの?って思ったからね。
あなたの担当は、「米ですっ」って言おうかと、思ったけど、脅かすとかわいそうなので、やめた。
「ううん。まだ2ヶ月半。今は、まだ秋の初めだから、UFOとか、一平ちゃんとか、焼きそばが良く売れてるけど・・・。これから、冬場になると、ラーメンやうどんが売れ出すんじゃないかな」
「なるほど、そうですか。いい勉強になります」
まじめな学生さんだ。大学の専攻は、法学部法律科らしい。
そんな、感じだなあ。
「副店長が、若いつばめが来るって、言ってましたよ!」
すると、つばめ君は意外な事を言った。
「いえ、若くないですよ。もう、21ですから」
21で、若くない
それじゃ、30半ばの私は、生きた化石・・・?
ちょっと、困惑した私に、今度は、つばめ君の方から質問した。
「大学の専攻は、何ですか?」
大学・・・。
いったい、どの大学だろうか。
日本での4年制大のことだよね、やっぱり・・・。
「英文科です。でも、卒業したのは、遥か、昔ですけど・・・(笑)」
すると、つばめ君の顔が、数秒間、停止状態を保っていた。
ぽかんとして、私を見ている。
まさか、私のこと、現役の大学生って思ってないよね
バイトは長いのかって、聞くあたりが、学生同士だと信じてるみたいだったけど
それまでは、初対面でも、割と気さくに御喋りしていた つばめ君は、急に いそいそとしだした。
それ以来、すれ違うたび、
「お疲れ様です」
と、言いながら、深々と、私に敬礼するのである。
「若く見えるも~ん。女子大生で、通るよ」
お姉さま達は、そういうが、まさか、現役の大学生が、自分と同級生くらいだと、勝手に信じてしまうなんてね・・・。