汽水空間 ~言葉と次元の力学系へ~

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小説 湿潤地帯 パート1

2012年08月07日 | 小説

 窓には湿り気の霞が張り付いていた。空には鳥が、羽ばたきながら雨の雫に、微睡んでいる。憂鬱な空。形を失ってしまった蒼穹。あなたは眠ったまま、私の手を離さないでいる。

 遠い空には、遥かを目指す、鳥の群れが羽ばたいている。私は、あなたの唇を奪う。あなたはよがり、私に懇願する。再び甘美な夢に浸るために。あなたは何処までも貪欲であった。私は、あなたの唇を奪い、そして包容する。

「愛してる」愛ははち切れそうな、豊潤さをそなえ、そして甘く湿潤していく。あなたは私の虜になって、何処までも深みにはまる。私は、あなたを抱きしめ、愛を囁く。

「何処までもいきたいんだ」

「そう」

私を見つめる瞳。底の見えない芳醇の漂う暗闇。あなたは、そこで私の身体を貪り、そして愛を確かめる。私は、あなたの唇に、唇を重ね、悦楽を感じた。

「深く…、もっと深く…」

 崩れた塔の、瓦礫をよじ上り、人の残骸を、押し退けてひたすらに進む。ここは何処だろう。あなたは感じていた。私の恥部に滲む湿潤は、果ての無い闇だということを。瓦礫は、大小の肉片のように、蠢いていた。あなたは、小さく嗤って、私を見つめる。何処までも、見えない闇の中を、突き進む。愛は、凋落し、苦しみと、絶望に変わり、愛欲を滲ませる。まるで血液のように、たぎる想いと同時に。

 あなたの口の周りには、私の舐めた舌の跡が残っている。私は、微笑みながら、あなたの潜める眉に、私の血を塗り拡げた。あなたは、愉悦に顔を遊ばせ、私に口づけを迫ろうとした。それでも、無くなりはしない、絶望の孤独をいやすには、足りなかった。私は、あなたの心を蹂躙する者。あなたは魅惑に染まる唇を、私の舌に挟んで弄んだ。私は、興奮して、あなたの乱れる髪を、救い上げて、揉んだ。

「何処までもいこう。宇宙の果てまで」

「何処までいっても、自分からは逃げられない」

「いじわる」

舌を這わせ、遊ぶ愉しみを味わう。あなたは、憂鬱そうに、顔をしかめ、確かめるように、私の恥部に、指を這わせた。

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