汽水空間 ~言葉と次元の力学系へ~

身体で体感する言葉の世界をお届けします(*´∀`)♪

堕胎される命

2015年12月26日 | 奇想の詩
委ねていた この身体が落ちて行く 浮遊感を
生暖かく 弛緩して 塞ぎこむ 誰も居ないこの世界で
胸に刺さる 感覚に苛まれて 鼓動が硬く 早まる時間に呑み込まれるように

身体を廻る血潮に 躍動する 感情に支配され
息を殺して 固唾を呑んだ 蒼い月が満ちて行く刻が迫るから
必死で逃げて 荒く蒸せ返る呼吸が 聴こえなくなるまで
何処までも落ちて行こう 例え行き着く先に 滅びがあろうとも

満ちて行く月が 震えて 光を撹拌させている
あとどれくらい生きていられるのか
そっと鼓動が 熱くなる瞬間 蒼月がその明かりを覗かせる
誰も居ない この世界で 果てしなく 落ちて行く 浮遊感に包まれて
何処までも行こう

もう誰にも 触れられぬ事も無い この手は乾涸びて
何の感触も感じない このままずっと咲く事もないのだろうか
息を殺して 必死で逃げて 蒸せ返るような呼吸が 聴こえなくなるまでに
どうか殺めて欲しい

蒼月が満ちて行く 胸に刺さる感触に苛まれながら
生温かい血潮が廻る 身体は満ちて行くから
やがて熱に支配され 意識の虚ろなこの世界に 咲き満ちる 刻を待つ
あとどれくらいの間 こうしたままで居るんだろう
身体を廻る血潮に流されて その虚ろな目は 固唾を呑んだ
光を撹拌させる蒼月 その影が満ちて行くのを ただ待っていたから

あとどれくらい こうして生きて居られるのだろう
噴き出した血脈に たじろぐ事も出来ずに ただ身を任せていた
息を殺して 必死に逃げた 浮遊する感覚だけが 生きていたから
やがて熱に支配され 身体が焼かれるのを待っている

蒼月が光に満たされて その影が撹拌されて 蠢めく
生温かい血潮が廻り 息を殺して 蒸せ返るような呼吸が 絶えるまで
どうかその手で殺めて欲しい
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赤い月の墜ちる夜は

2015年12月22日 | 妖艶の詩
流星の墜ちる夜は 赤い月の微睡む気配
この瞳に煌々と輝く夜空
それはとても儚くて 惨めに散る花びらのよう
いつまでもこの手を握って居て
欲しいものは あなたのその寂しさだけだから

小さく鼓動を打ち 暗闇に咲き乱れる情愛
それは接吻を交わす程に 熱く湧き上がる運命を刻む

赤い月の気配が迫り来る中で
求め合う心が引き裂かれてしまう
その渦中 妖しく折り重なる視線は
ただその瞳を見つめている

身体が触れ合う瞬間に 儚くも崩れ去る運命の悪戯
だから いつまでも その優しさに包まれて
このまま消えてしまいたい

それでも込み上げてくる熱に苛まれる この身体が
甘く誘惑する その唇を突き放した
壊れてしまうのが 怖い
それでも匂い立つような魅惑的な想いが
この身体の隅々にまで沁み込んで来るのは
抱き締められた あの時の温もりを まだ憶えているから

やがて 暗鬱の染み込むその優しさに 身体が絆されて行く
よりきつく絡み合った心は 更に深く その甘い唇に侵食されて
二度と逃れられない 感情の迷宮に迷い込んでしまう

終焉の無い接吻
やがて赤い月が 歪んだ微笑みを浮かべる刻
身体を覆い尽くす赤い花々は 燦然と燃え上がる

繰り返される罪が融解していく最中
暗鬱な焔に揺れ 枯れた花々が 赤い月に照らされて 泣いている
壊れて行く身体は 赤い涙を流し 悲しみを膨張させる

赤い月が嗤い 可憐なる焔に 花々は散って行く
非情な運命に翻弄され それでも尚 交わし続ける接吻
心が突き放しても 身体は妖艶なる熱に呑み込まれてしまう
それは終焉の無い感情の迷宮
ねぇ お願い これ以上 優しくしないで
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夕間暮れの刻が暮れて行く

2015年12月19日 | 愛の詩
懐かしさに包まれた 夕陽が注ぐ
川面は風に揺れている 畦道は遠く 陽の妖艶なる暖かさに連れられて
どこまでも沈んで行こうと 握り返した手は
冷ややかなる夕間暮れの微風に吹かれて そっと力が入る

仰ぎ見た蒼空は 幽遠なるその先を映しはしない
麗らかなる 黒色の背中が導いてくれた
もう戻れないあの時間は 掛け替えのない想い出と
握り返した手の冷たき感触に彩られている

鮮やかなる早雲は 風になびく 一抹の不安を写す鏡
艶やかな景色が 夕陽の優しき眼差しに揺れて
もう二度と振り返らない 背中をぼかしてしまう

何一つ変わらない 風景は まるであの頃に抱かれていた感覚のよう
懐かしい その笑顔が もう帰らないあの瞬間を 哀しく染めてしまうから
だからもう泣かないで
流れ行く川面に煌めく光が こんなにも淋しいものだとは思わなかった

幸せだったよ
あの時見せてくれた 涙に 架かったこの想いが こんなにも切なくて
不意に抱き締めていた 風に煽られ舞う枯葉が夕陽に輝いて
その明媚なる瞬間が とても愛らしく想えたから

蒼空が高く舞い上がる それでも時間は移ろい
あの時 傷つけ合った事が 切なくて塞ぎこんでしまった
この想いが 壊れてしまうのが怖くて 云えなかった感情は
未だにこの胸の裡にしまっているから

ねえ どうして こんなに時間が経つのが早いんだろう
あの時 何一つ云えなかった言葉が 今でも蟠ったままで居るから

夕間暮れの刻が徐々に暮れて 暖かな色彩が褪せていく中で
もう振り向く事もない あの瞬間を想い描く
それでも伝えたかった
そう願う 心から云えたい想いが この胸の裡に確かにあったから


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夢から醒めないように

2015年12月18日 | 愛の詩
星空の下で交わし合う 夢から醒めないように ずっと深く
絡めた指の間から溢れる優しさに 溺れてしまわないように
ねぇ そっとその指先で この唇を塞いで欲しい

幽かに燻る微熱に 心が奥底へと導かれて やがて絆されてしまったの
甘く囁く声に 身体が蕩けてしまいそうで 嬉しく恥じらってしまう
でもその優しき眼に包まれて 火照った身体が怖気付いてしまうから
この淡く色付く柔らかな視界から 重く瞳を閉ざした

寂れた現実に帰るのが怖いの だから もっと抱き締めていて
冷たい夜空に 流れる星が消えて 辺りは静まり返る
どうしようもない悲しみに暮れていた 在りし日の姿
けど今なら感じる 抱き締められた瞬間の確かな繋がりを

絡め合う指先に 逃れられない運命の陰 そして哀愁が薫る
そのきつく締め付けられるような 寂しさにもがく 胡乱なる瞳
ねえ このままずっと こうして居られるのかな

流れる星が夜空いっぱいに溢れては 儚く散って行く
それでも時間は流れて 確かなこの名残りをも失ってしまうのだろう
それなら ねえ 今のこの温もりさえも いつか消えてしまうのなら
どうして求め合ってしまったのだろう

だからこの手を包み込んで居て 心が溶けてしまう程に いつまでも
きつく絡み付いた この赤い糸は もう解けはしないから
どこまでも行きたい この胸の裡に 灯る淋しさに抱かれながら
ずっと眠っていたかったの

冷たい頬に触れて 流れる涙の線を辿った
そしてやがて知ってしまったの

ずっと抱き締めていて欲しい
その優しさでもっと見つめていて欲しかった
例え わずかな一時でも良いから
この安らぎを まだ壊したくはないから

色取り取りの流星が溢れる あの夜空は 今に満開の瞬間を迎える
いずれこの全てが壊れてしまうのなら それでも構わない
だけどせめて この夢心地の中では あなたに抱かれたままでいたいの
だからねえ もう二度と離さないで
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身体の線が無くなるまで

2015年12月12日 | 奇想の詩
流れる水に浸す この身体のあらゆる線が無くなるまで
沈み行く 水面から遠ざかる程に 暗くなってしまう
もうこの耳には あなたの声さえも届かない
この手を見て 全ての想い出や言葉がすり抜けて行く

水面から遠ざかる度に 湧き上がる
あの時の歓びや虚しさが この胸を打つから

拡がる紺碧の世界 光が淡く差し込む
ここには風の音さえも無い
揺られる身体は まるで迷路に迷いこんだように ただ彷徨うだけ
やがてあの深淵に融けてしまうまで
この手は もう誰にも握り返される事も無い

花弁が散って行く
いずれこの時間の感覚も 消えてしまうのだろうか
水面に浮かぶ小さな灯りは 優しい眼差しのように
どこまでも深いこの世界を照らしている

いつかその時が来たら
冷たいあの場所に 辿り着くのだろう
紺碧のこの世界に差し込む光
それは小さく揺れて 音も無く沈む
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こちらあみ子 今村夏子

2015年12月05日 | 本レビュー

 

こちらあみ子 (ちくま文庫)
今村夏子
筑摩書房

 

まず感じたのが、いかに巷の小説がドラマで演出されているかという事だった。周囲を見渡してみれば、小説に描かれるようなドラマのある日常などほとんどない。しかし小説として構成されるストーリーにはドラマやロマンが溢れる。むしろこのような高揚感こそ、読者が小説に求めている非日常なのではないか。このようにドラマで脚色された小説に慣れ親しんでいる読者にとっては、この物語は肩透かしものに見えるだろう。なぜならこの小説で出てくる場面場面の表現に、ドラマ的要素が少ないからだ。読者は、随所に現れる特徴的なシーンに、ここぞっというドラマ的表現を求めているのではないか。しかしこの小説は、見事にそのような読者の期待感を裏切ってくれる。なぜならどのようなシーンの表現も、とてもピュアなものだからだ。それに、この小説の出来事自体は、奇異なものに見えるかの知れない。が、全く同じ構成で、他の小説家が書いたなら、そのストーリーは、もっとドラマティックに演出され、人物の心象ももっとセンシティブな面にフォーカスされていただろうと思う。よって読者のそのような肩透かし感こそ、普段の読書で、いかにドラマ的陶酔感に慣れてしまっているかという事の裏返しかもしれない。

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