アルツハイマー病態に飢餓状態が重なると、症状が悪化する可能性があるという研究結果がScientific Reportsに発表されたそうです(財経新聞)。アルツハイマー病を初めとする神経変性疾患は、細胞の内外に異常タンパク質が蓄積することが病理学的な特徴で、異常タンパク質を除去する細胞機構として、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジー系の2つの分解系があることが知られています。今回の研究では、マクロオートファジーを特徴付けるオートファゴゾームのマーカー分子である LC3から作製した融合蛍光タンパク質(LC3-EGFP)を脳内に発現させ、生きたマウスの脳内部でダイナミックに変化するオートファゴゾームを2光子顕微鏡で観察する方法を開発。そして、この方法を用いて、脳における飢餓誘導性オートファジーが神経細胞において実際に存在すること、脳内のオートファゴゾーム形成に概日リズムがあることを発見。さらに、アルツハイマー病態では飢餓による誘導性オートファジーが亢進しているものの、エンドサイトーシス亢進によって細胞外から取り込んだベータアミロイドを十分に分解処理出来ず、細胞内にベータアミロイドを溜め込むことや、この細胞内アミロイドの増加はアルツハイマー病で侵されやすい脳内の重要部位で起こることも明らかにしたそうです。また、細胞内にベータアミロイドが増加した神経細胞を詳細に観察すると、一部は細胞が膨張して破裂し、ベータアミロイドを周辺にまき散らす像も得られたとも。これらの結果は、アルツハイマー病態に飢餓状態が重なることで細胞内のベータアミロイドが増加して細胞死につながり、病態の悪化が加速する可能性を示しているそうです。過度なカロリー摂取などの生活習慣がアルツハイマー病進行を早める要素であることが広く認められているそうですが、脳内で細胞外のベータアミロイド濃度がある程度高まった後では、むしろ、カロリー制限によってアルツハイマー病態を悪化させるリスクとなることが想定されるそうです。今後、アルツハイマー病の病態理解と治療法開発につながると期待されるそうです。
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