1979年10月4日、テレビ朝日の「溝口泰男モーニングショー」で野球ファンを名乗る人物が
一昨年、セ・リーグのある審判員 (後に平光氏と明かす) から巨人戦入場券を1枚2万円の
ヤミ値で6枚購入したと告白しました。'79年当時 マスコミは 「巨人寄りの審判員」 検証を
行なっていて、この件は巨人との癒着をあらわす一例としてテレビ朝日は番組で取り上げました。
「モーニングショー」という番組は芸能ネタ専門のワイドショーではなく、時事・社会問題も扱う
硬派番組でした。それだけに反響も大きくセ・リーグ連盟も調査に乗り出しました。
「巨人寄りの審判員」の放送を見た視聴者から「私はA審判から巨人戦のヤミチケットを買った」というタレ込みが番組にあり
さっそくインタビューし放送しました。「2年前にA審判から1枚2千円のチケットを2万円で6枚買った」 「最初は知人を通して
その後はA審判の自宅で直接買いました」と証言。ところが番組を見た告発者の知人がテレ朝ではなく産経新聞社に連絡し
新聞社から告発者の身元を知らされたたセ・リーグは鈴木会長が直々に、この告発者と対面しました。この会談で放送された
以上のモノは出てこず、後日あらためて会うとの約束をしてこの日の会談は終わりました。
平光審判員は「事実無根」と反論しましたが、告発者の発言が確認されるまで自宅待機となり世間から疑惑の目で見られる
ようになりました。2日後、約束の場所に告発者X氏は現れませんでした。昼過ぎにX氏からセ・リーグ事務所に電話が入り
夜7時に東京・芝のグランドホテルで会うことになりました。ところが7時を過ぎてもX氏は来ません。マスコミがX氏の居所を
探索したところテレビ朝日にいるらしいと分かり、記者が局に押しかけました。報道陣はX氏の会見を要求しましたがテレ朝の
広報担当者は「局にはいない」の一点張り。しかし やがて それも嘘と分かり、午後9時過ぎになって番組プロデューサーに
付き添われてX氏が会見場に現れました。
会見ではX氏が番組で語った内容について質問が相次ぎ、買ったとされる席は年間予約席で定価は設定せれておらず
2千円との根拠は?との問いに、「2千円が相場だと思った」とあっさり前言を撤回。買った場所や回数もくるくる変わり、
平光審判員の自宅の場所も知らないと白状しました。追求は番組プロデューサーにも向けられ、訂正と謝罪を繰り返して
とうとう最後に「X氏の言い分を全て信じて何の裏付けも取らずに放送した」と驚き発言。
一人の人間が社会的に抹殺されかねない問題の事実関係を、何ひとつ検証する事なく放送して
しまったテレビ朝日は、X氏以上に批判の的となりました。朝日vs讀賣の対立構図が透けて見え
ますが今回は朝日側の完全な勇み足でした。現在では定価を上回る闇値どころかチケット屋で
叩き売り状態な巨人戦チケットですが当時は入手困難なプラチナチケットだったようです。この後
しばらく讀賣は新聞・テレビを使って朝日批判キャンペーンを大々的に繰り広げたそうです。 何の
確認もせず放送してしまうモラルを欠いた朝日と、そんな溺れかけの同業者をコレ幸いと執拗に
攻撃する讀賣。情けないですが、我が国の主要メディアは目糞・ハナ糞状態という事でしょうか…