以前に 『 #195 スポーツジャーナリズム(笑)』 でスポーツ新聞の記事について触れましたが相変わらずのようです。
5月22日の在阪スポーツ紙の大半が阪神・竹之内の引退を一面で扱っていたが、A紙のみが『若菜ロッテに移籍』と書いた。その概要は植松精一外野手をプラスしてロッテから安木祥二投手と入沢淳捕手を獲得するというもの。若菜放出の理由は左胸に死球を受けて以来、首脳陣は常時出場が難しいと判断して笠間捕手との併用を決めたが本人はこれに納得しておらず怠慢プレーが目立つようになった。首脳陣との話し合いの場が何度か設けられたが両者の溝は埋まらず若菜はチーム内で浮いた存在になってしまった。チームの結束を第一と考える安藤監督は「放出やむなし」の決断をし、若菜本人も移籍に納得していて最近では親しい関係者に「移籍先はロッテらしいよ」と話しているという。
この記事が一面を飾った当日の朝、他紙の記者達は安藤監督宅に詰めかけ問い質したが「根も葉もない話で悪意すら感じる」と一蹴した。「多少なりとも可能性がある話ならそれなりの答え方をする。100%いや200%無い話で書いた新聞社の神経を疑う」「こんなデタラメな記事を書かれるのならもう他紙の記者さん相手でも何も喋らない」とけんもほろろ。記者は念の為に小津球団社長と国内トレード担当の西山調査部長にも確認を取ったが二人の答えも「有り得ない話」だった。
では何故この様な記事が出たのか?周辺を取材すると「状況証拠」を元に書かれたようだ。❶笠間と併用とは言うものの若菜は控え扱いに不満を募らせている➋去年痛めた左肩痛が再発した事で動きが緩慢になり周囲の目には怠慢プレーと映りチーム内で孤立➌私生活では「子供を静かな環境で育てたい」として妻子を福岡に残したままの単身生活を送っていて球団幹部の耳に良からぬ醜聞話が入って来る➍投手陣の立て直しが急務で過日、西山調査部長が大阪球場内でロッテ関係者とヒソヒソ話をしているのが目撃された❺ロッテとは昨年にもシーズン中に福間⇔深沢のトレードを成立させている…と憶測の域を出てはいない。
阪神サイドの否定で若菜のトレード話は鎮静化したが阪神絡みではもう一つのトレードが噂さてれいる。つい先日、巨人・中司得三外野手との交換トレードが御破算になった南海・上田次朗投手の阪神復帰だ。左腕エースの山本和を救援に回さざるを得ないほど阪神投手陣は駒が足りていない。使える中継ぎ投手が欲しい阪神が背中を痛めて二軍で燻っている上田に目をつけた。上田は元々阪神から金銭トレードで南海へ移籍したとあって阪神サイドは金銭での譲渡を南海へ打診した所、南海フロントは了承したがビジネスライクな「外人」のブレイザー監督が難色を示した。上田は西武に強く後期での巻き返しの為にも「西武に相性の良い上田を出すなら交換トレードでなければ」と言い出した。それなりの見返り…として益山投手か加藤外野手の名前が上がっているが阪神サイドは到底飲めず、今の所はこの話は自然消滅状態だが「貧すれば鈍する」となった阪神がブレイザー監督の要求を受け入れて急転直下トレードが成立する可能性もゼロではない。
移籍1年目の昨年は結果を残せず「今年こそ」と復活を期しながらも低迷を続ける広島・高橋直投手の周辺もキナ臭い。かつては日ハムと言うよりパ・リーグを代表する投手が江夏との交換で広島へやって来たが僅か2勝(5敗)と期待を裏切った。今季も早々と古葉監督の構想から外れて二軍暮らしが続いている。二軍を視察した古葉監督の前で打撃投手を務めたが「素晴らしい球。何故あの投球が一軍相手だと出来ないのか。セ・リーグの水に合わないとしか考えられない…」と古葉監督もお手上げ。熱狂的なカープファンの度重なる嫌がらせに転居を余儀なくされた経緯もあり夫人は「東京に帰りたい」とこぼしていると言われている。
トレードの相手はここでもロッテで三井雅晴投手と倉持明投手との2対1の交換が有力とB紙が書いた。若菜の時の阪神と同じく広島サイドもこのトレード話を否定したが、その内容は阪神とは少し違っていた。広島の球団幹部は「確かに今のウチは投手が欲しいよ。でもロッテさんには失礼だが現在の三井と倉持は満足に投げられる状態じゃないでしょ?肩とヒジに爆弾を持つ投手と交換する程バカじゃない。いい加減な事を書いてもらっちゃ困る」「B紙が今後も推測で記事を書くなら取材拒否だ。出直しに一生懸命な高橋君が気の毒だよ」と凄い剣幕で記事を書いたB紙を名指しで批判した。
実は投手難にあえぐ球団にとって広島の二軍は垂涎の的なのである。高橋直の他にも渡辺、金田、佐伯、新美など一世を風靡した投手の溜り場となっているのだ。確かに投手としての峠は越してはいるが勝ち星の合計は507勝と実績は充分で使い方次第では未知数の若手よりチームに貢献できる。広島にしても上位に食い込むには左の先発投手や右の代打が不足しているのが現状であり相手次第では交換トレードに応じる用意はあるはず。そうなるとトレード候補の筆頭としてはやはり高橋直の名前が出て来る。「高給取りを二軍で眠らせておくよりは働く場を与えてあげる方が本人にも球団にもプラスになる」と明言する球団幹部がいるのも事実だ。言ってみれば今回のトレード話は一種の打ち上げ花火で様子見に過ぎず、トレードの期限である6月30日まで目が離せない。
結局、若菜はこの年オフに阪神を退団。メジャーを目指して渡米しますが結果は3A止まりで昇格はならず、1年も経たぬ間に臆面も無く日本球界に復帰する事になります。