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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 737 優良助っ人

2022年04月27日 | 1977 年 



リーさん、あなたはこんなに大物だったのですか。恐れ入りました。キャンプの印象からはとてもこんな働きは予想できませんでした。しかし予想以上の大暴れは楽しいものです。もう壊れたピストルなどと言えません。ただただこれからも超ド級の大砲ぶりを発揮してくれることを祈ります。リーさんに脱帽。

ネズミと思わせ実は獅子だった
今現在、最も脅威のバッターは誰かと問われたらロッテのリー選手と答えるのが正解だろう。何しろセ・パ両リーグを通じてホームランダービーのトップを快走中。打率.316 (5月26日現在)も打撃10傑の上位に鎮座。それよりも開幕2試合目から14試合連続安打。更に5月8日から19日まで11試合連続打点という日本タイ記録を樹立する猛打ぶりである。何しろこの記録は昭和24年に西沢選手(中日)と同49年に長池選手(阪急)の2人しか成就していないという凄いもので、それを来日1年目でまだ慣れていない異国の地でやってのけたのだから末恐ろしいと言う他はない。

リーの脅威ぶりはそのホームランにある。量産している数も凄いが " 決勝 " と名のつくホームランが19本中、5本。それに " 同点 " の名がつくのを加えると半数を超える。数も凄いが内容も凄いのである。こんなリーだが実はつい2ヶ月ほど前、つまり開幕前はこれほどの大物とは思われていなかった。というより「ダメ害人」「大砲ならぬピストル」など酷評の嵐だった。だがこれは伝えるマスコミ側の言い訳になるが無理もない話で来日した時も野球をしに来たのではなく遊びに来たのかと思わせる登場だった。何しろ持参したのがバットではなく模型のラジコン飛行機を大事そうに抱えて報道陣が待つ羽田空港に降り立ったのだ。

キャンプが始まってもバットから快音は聞かれない。詰まった内野フライか外野へ飛んでも打球がフェンス際でお辞儀をしてしまう有様。キャンプを訪れた評論家諸氏は「ロッテはまた外人獲得に失敗した」と言い切った。コーチ陣も「いくら練習してもピリッとしない。一体いつまで時差ボケが続くんだ」と嘆き、あのカネやんも「大砲のつもりで獲ったのにこれでは買い替えなアカン」と憮然としていた。実はこの時のリーは大リーグ時代に痛めた肉離れが再発していて体調が万全ではなかったのだが、それを見抜けなかった関係者は今となっては恥じ入るばかりだ。羊頭狗肉ではないがネズミ程度の小物と思ったら実はライオンだったということだ。


マイペース守りきって大きな効果
しかし、どうしてこうも見事に本番になると一転してライオンの如き猛威を発揮できたのだろうか。「ボクはもともとスロースターターなんだ。それに肉離れもあったり日本の冬は寒くてキャンプの頃はマイペースでやらせてもらっていた」と当の本人は説明する。多くの助っ人外人選手は来日するとポンポン大きな当たりを見せて日本人を驚かす。それに慣れていたマスコミやロッテ関係者はマイペースを守りトスバッティングみたいな当たりを見てリーを過小評価していたに過ぎない。だが最大の難関はカネやんだった。これまではダメ外人を見切るのが早かったカネやんだったが今回は何故かジッと我慢の子を通した。

監督1年目の昭和48年以来、自ら断を下して獲得した助っ人はリーを含めて7人。ラフィーバー(現コーチ)から始まってロザリオ(現クラウン)、マクナリティ、バチスタ、ブリッグス、そして今季はスティーブとリー。ラフィーバー以外は期待に応えられず、スティーブは今年の5月23日に僅か3ヶ月で退団したがリーは如何に?カネやんはチャンスで打てなかったり大事な試合で勝ち投手になれない外人選手は容赦しない。「当たり前やろ。高い銭を貰っている " 助っ人 " なんだから。チームのピンチに助けにならなきゃ助っ人と呼べんよ」と常々言っていたが、リーに対しては諦めていたのか無視していたのかマイペースを放置していたのが結果的に功を奏した。


" リーシフト " を突き破る猛打と計算
「どこへ投げたらいいんだろう。もう投げるところがないよ。長距離砲は必ず穴がある筈なんだが…」と泣きを入れるのは日ハムの高橋直投手。これといったウイークポイントがないのである。「あれはいいバッターや」と他の誰よりも早くリーの実力を見抜いたのが西本監督(近鉄)だったが未だに完全にリーを抑える特効薬は見つけていない。とうとう王シフトならぬ " リーシフト " が敷かれたのは4月19日の南海戦だった。野村監督は王シフトのように野手を右側に移動させた。が、リーはそんな奇策を嘲笑うかのように 中越え二塁打と右前打を放ったのだからもう手の施しようがない。

「あんなのは大リーグでも経験していない。でも別に打ちにくいとは思わない。いつも通りに打てばいいのさ」と言うがちゃんと対策をしている。これまで引っ張って右方向ばかりだった本塁打。リーシフトが敷かれた後の5月11日に放った12号本塁打は左翼席中段に飛び込んだ。「狙った訳ではない。左へ打つ練習の結果でしょう」とリーは惚けたが、流し打ちの練習などしてはいなかった。引っ張るだけの打法じゃないと強調するには丁度よいタイミングで出た左方向への一発を上手く利用したのだ。その辺もしたたかだ。そうした効果の現れなのかリーシフトを採用しなくなった球団も出始めた。

大暴れのリーだが弱点が無いわけではない。山田投手(阪急)が言うには「胸元の浮き上がる球に弱い」らしい。事実、リーは山田を打ち崩してない。また左腕投手が投げるカーブには今一つ鋭い打撃を披露できないでいる。特に永射投手(クラウン)にはヘビに睨まれたカエル状態で手も足も出ない。しかしロッテの吉田打撃コーチは「山田のような下手投げ投手はアメリカにはいないから面喰っているだけ。しかも山田は日本を代表するクラスの投手だから打てないのはリーだけではない。リーは大リーグでは右腕投手相手の代打起用が多く左腕に対して慣れていない。対戦する機会が増えれば打ち出しますよ」と不安を抱いてはいない。


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