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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#320 創刊25周年企画 ③ センバツ大会 【前】

2014年04月30日 | 1983 年 



週刊ベースボールが創刊された昭和33年春、早実の王投手はセンバツ大会連覇を目指して甲子園に帰って来た。前年の第29回大会で王は寝屋川高、柳井高、久留米商をいずれも完封して決勝戦に進み高知商を5対3で破って紫紺の優勝旗が初めて箱根の関を越える立役者となった。この大会は出場20校中、主戦投手の半数以上が左腕投手だった特異な年だった。ちなみに柳井高のエースだったのが元阪神の遠井吾郎、高知商のエースが現巨人スコアラー・小松であった。

連覇を狙う早実は2回戦から登場し御所実に勝つには勝ったが王投手は本調子からはほど遠く、思いのほか苦戦をし4対3の辛勝だった。王投手の調子は3回戦でも戻らず濟々黌高に打ち込まれ3対7で敗れ連覇の夢は潰えた。ただし2本塁打を放ち打撃面では非凡な所を見せた。優勝候補の早実を敗り波に乗った濟々黌高はその後同じ熊本県勢の熊本工、中京商と強豪を次々と倒し遂に優勝旗を手にした。

岩戸景気が訪れた昭和34年は世の中が騒然となる出来事が相次いだ。5千人を超す死者・行方不明者を出した伊勢湾台風の襲来、沖縄(当時はまだ本土復帰前)の宮森小学校に米軍ジェット機が墜落し死者21人・負傷者100人を超す事故…等々。一方で皇太子殿下と美智子さんとの御成婚やIOC総会で東京五輪の招致が決まる慶事も。この年の入場行進曲は御成婚を祝って『皇太子のタンゴ』であったが、その御成婚当日の4月10日に決勝戦が中京商と岐阜商で行われ中京商が制した。

敗れた岐阜商の三番打者だったのが高木コーチ(中日)で「あともう1イニング欲しかった。9回に1点差にした時の勢いは凄かっただけに…今でも悔しい」と2対3の惜敗だった。余談だがこの決勝戦は当初の予定では前日に行われる筈だったが雨で順延。その為に決勝戦のテレビ中継は皇太子殿下御成婚関連ニュースに追いやられ全国中継されなかった。

昭和35年にヒットした『南国土佐を後にして』に合わせるように高松商が勝ち進み決勝戦で米子東と対戦した。両校が共に4回に1点をあげて以降ゼロ行進。迎えた9回裏、高松商の先頭打者・山口(立教大→阪急)が米子東・宮本(早大→巨人→広島→南海)から左翼ラッキーゾーンに史上初の決勝戦サヨナラ本塁打を放ち高松商が36年ぶり2回目の栄冠に輝いた。またこの年は初めて沖縄代表(那覇高)が甲子園に登場した記念すべき大会であった。那覇高主将・牧志清順選手が高らかに選手宣誓をした。「あの時の甲子園の空、薫風、そして行進曲の『誕生日』に感激したのを憶えています(牧志)」と懐かしむ。

昭和36年は連覇を目指して順調に勝ち進んだ高松商と前年夏の大会を制して今大会も浪商・尾崎行雄投手(東映)を倒した法政二高との決勝戦、結果は柴田勲投手(巨人)擁する法政二高が4対0でセンバツ大会初優勝を遂げた。翌37年の第34回大会の主役は作新学院。3回戦の八幡商戦は0対0のまま延長18回引き分け。再試合となった翌日もエース・八木沢壮六投手(ロッテ)が力投し通算27回を零封し2対0で勝った。その後は松山商、日大三高も下して優勝した。栃木県代表の優勝は過去最北の地の優勝であった。

昭和38年の第35回大会、PL学園の戸田善紀投手(阪急→中日)が沖縄・首里高相手に21奪三振で大会記録を33年ぶりに更新。1試合5盗塁の大会記録をマークした谷木恭平(立教大→中日)らの活躍で北海高が北海道勢初の決勝戦進出を果たした。決勝進出が決まった瞬間、チーム全員が声を上げて泣き崩れた姿は忘れられない。決勝戦を制したのは剛腕・池永投手擁する下関商で10対0の圧勝で、この大会から第1回大会から使われてきた優勝旗に変わって二代目となる新たな優勝旗を手にした。優勝旗を授与された下関商・佐野芳徳主将は昭和20年8月6日の原爆投下時、生後40日目に広島市観音本町にいて爆風で破壊されたガラス片で右側頭部をえぐられ大手術の末に一命を取りとめた被爆者だった。

東京五輪が開催された昭和39年・36回大会の開会式には五輪旗が入場行進に登場してセレモニーに花を添えた。大会前の下馬評ではノーマークだった徳島・海南高が快進撃を見せる。「ウチの実力は参加23校中23番目。1回戦で負けるでしょうから実は既に私も生徒も帰り支度を済まして来ました」と初戦の試合開始前に海南高・市川隆夫監督は言っていたがあれよあれよと言う間に勝ち進み、とうとう決勝戦で尾道商を破って優勝してしまった。この時のエースが後のプロゴルファー・ジャンボ尾崎こと尾崎将司投手。

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