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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#207 ビーンボール ①

2012年02月22日 | 1981 年 



6月28日の巨人vs広島戦で広島の福士と小川投手が原に対して2度にわたって頭部付近へ、あわやという投球をした事が発端で不穏な空気が漂い始めた。「原に対する攻め方、これは既に春のオープン戦の時からあった。滝口という若い投手がいきなり頭を狙ってきて、そして今度だ。審判も明らかに不自然だと思われる投球には退場を宣告するくらいの厳しい処置をとって欲しいね(牧野ヘッド)」「28日の試合は雨が降って人工芝は濡れていたのに二塁手の三村はボールを投手に返球する時に故意にバウンドさせてた。当然ボールは滑るし、それはスッポ抜けの言い訳になるからね(藤田監督)」と巨人側は怒り心頭なのだ。

片や広島側は当然「内角攻めは投球術のひとつ。当てろなんて指示は絶対にしていないし実際ぶつけてないでしょ」と否定した上で、逆に王助監督を批判した。「一悶着あった後ベンチ内で王が自分の頭を3度指したのは『報復しろ』とバッテリーに指示したのではないか」と疑問を呈した。これに対し王は「とんでもない誤解だ。アレは阿南ベースコーチを通じて古葉監督へ 『今度頭部付近へ来たら3度目だから言い訳できませんよ』 と言うメッセージを送る為のジェスチャーだよ」と応酬するなど両球団の遺恨は当分の間は治まりそうにない。

何もビーンボール騒動は巨人戦だけではない。4月26日の阪急vs西武戦で島谷が東尾にぶつけられた。さらに続く小林にも頭上をかすめる投球に上田監督・長池コーチが 「危ないじゃないか」 とグラウンドへ飛び出したが審判に制され大事には至らなかった。そして5月19日の試合で、またしても東尾が島谷の頭部付近へ投げた為に島谷が激怒。バットを投げ捨て東尾へ突進して両軍入り乱れての乱闘となった。これでも分かるように必ず伏線があるのがビーンボール騒動だ。東尾は「ぶつけようと狙って投げる投手なんていない。でも胸元高目へ投げるのは一種の武器さ、俺は投球スタイルを変えるつもりはないよ」と今後も内角を突く投球を続けると宣言したが、実は西武首脳陣が東尾へ内角攻めを控えるように注意をしたとの情報が広まった。何故か?それには石毛の存在がある。新人では初の首位打者も夢ではない位置にいるが 「後期はかなり内角を攻められるでしょう」 と石毛自身も自分を取り巻く雰囲気の変化を感じとっている。東尾がぶつければ報復で石毛が狙われかねない。石毛が怪我をして離脱したら西武にとっても一大事なのだ。

当事者の選手達はどう考えているのだろうか。日ハムの柏原は「ボクの場合はきわどい球を避けるのが上手いのか死球は少ないけど首から上に当てられたら腹が立つでしょうね。体をのけぞらすのも投球術のひとつでしょうけど、同じ野球で飯を喰ってる者同士ですから頭だけは勘弁して欲しいよね」 また巨人の投手陣をリードする山倉は 「打者を打ち取る最も基本的な攻め方は外角低目。打者が外角低目だけに的を絞っていても、そこに球が来ればまず打たれない。ぶつけないだけのコントロールに自信があるなら外角低目に投げておけば内角攻めの必要は無い。ウチの西本はシュートピッチャーだから死球も多いけどほとんどがベルト付近で胸元から上はない。江川なんて外一辺倒だけど打者を抑えてる。要は首から上に当てるような投手はプロレベルではないという事」とバッサリ。

最後に江夏の言葉を紹介しよう。「セ・リーグにいた時は、ゲーム前の練習で相手選手と顔を合わせたら"今日は内角をビシビシ行くで"と言ってたな。実際には投げなくても腰を引いてる奴が結構いたな。でもねあれも投手の作戦のひとつだけど首脳陣がけしかけるのは論外だよ。あくまでも選手同士の信頼関係がある事が前提だからね、プロの世界は」 選手生命を断ちかねない故意の死球などは無いと信じたい。




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