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# 783 長嶋巨人

2023年03月15日 | 1977 年 



ペナントレースの折り返し地点を首位で通過した長嶋巨人。今季のセは戦国リーグだけに2位と5ゲーム差の首位は天っ晴れだろう。その長嶋巨人を知る担当記者や評論家にズバリ採点と中身を解剖してもらった。

末次、加藤初を欠いての貯金15は合格点
7月1日現在、巨人は39勝24敗2分けで2位のヤクルトに5ゲーム差の首位。一応、独走と言って構わない形でペナントレースを折り返した。昨季は同じく65試合消化時点で42勝20敗3分けで貯金22だった。それと比べると今季はやや見劣りするが、末次選手や加藤初投手といった投打の主軸を欠いてのシーズンなので仕方ないだろう。昨季は前半戦で2桁連勝(14連勝)があったが今季は8連勝が最多。長嶋監督は何とか連勝を伸ばしてスパートをかけたいと思っているが、セ・リーグ全体の力は均等化しており簡単には抜け出せない。

「今の戦力なら90点以上は付けていいでしょう。開幕直後は代打の成功率は低かったが長嶋監督は我慢をして若手選手を代打や代走に起用しゲームに慣れさせた。その成果は徐々にだが出始めている。ベテランが怪我をした時の穴埋めにも目途が立った。長嶋監督はそこまで考えて選手起用をしている(巨人担当M記者)」また長嶋監督が非常に監督らしくなったと評価する記者もいる。「とにかく野球一筋で朝から晩まで野球のことを考えていて、これまでの野球界では有り得なかったことが巨人戦では当たり前のように起こる。王選手のバントとか。川上哲治氏の『ボールが止まって見える』ではないが今の長嶋監督は試合がよく見えるのではないか(巨人担当K記者)」

長嶋監督のセオリー無視は野球評論家諸氏を驚かせたが「近代野球とは何か」に取り組んでいる長嶋監督は以前、こう発言している。「俺ほどセオリーに忠実な人間はいないよ」と。ぞれが試合に如実に表れるのが代打を起用する時。右投手には左打者、左投手には右打者と決めつけているきらいがある。「左対左でも苦にしない打者はいるが躊躇なく交代させる。それは投手起用でも同じ。ある意味とても頑固だと言える(巨人担当H記者)」。また長嶋采配についてセオリー無視の " 奇略家 " と批評をする野球評論家も少なくない。

敢えて名前は伏すが某巨人OBは「論より証拠で実際に勝てているので悪い点数は付けられないが奇想天外な作戦はどうかと思う。例えば張本にスクイズのサインを出したり。問題は選手がそれを納得し理解しているかですよね。監督の独りよがりや奇策はいずれメッキが剥がれて長続きはしませんよ。今のところは長嶋のミスを選手がカバーしていると見た方がよいです」と手厳しい。確かにミスもあるだろう。長嶋監督特有のヒラメキによって動き過ぎて選手が駒不足になる場面が何度かあった。

だが他人が何と言おうと意地を貫くのが長嶋監督だ。「あのリンド選手を一人前にした。来日後の評価はガタ落ちだったが我慢して使っていくうちに日本の野球に慣れて今では立派な戦力になった。若手の西本投手・小俣投手を辛抱強く育てあげた。コイツを育てると決めたらとことん使う。最下位に沈んだ昭和50年のシーズンで打たれても打たれても交代させず使い続けて育てた新浦投手が良い例だ。周囲から反対意見をされると方向転換するのが普通だが長嶋監督は意に介さない。それが今のところ『吉』と出ている(前出H記者)」


若い投手の使い方と捨てゲーム
投手陣の先発ローテーションは杉下投手コーチに一任している。はた目には1戦1戦苦しい戦いを強いられている巨人だが、こと先発投手陣に限っては非常に長期的な視点でローテーションを考えている。またリリーフ陣に関しても杉下コーチの意見を取り入れながら適度な休養を与えている。若くスタミナがある西本投手の7連投を除いては。開幕前の投手陣全体の評価は低かった。もともと打高投低と言われていたのに加えて今季は加藤初投手が出遅れたり、浅野投手が再度のヒジ痛で離脱するなど苦しかったのも事実。

そんな中、新浦投手が調子を崩すとミニキャンプで鍛え直したり肩やヒジに痛みを発症した投手は無理をさせず休ませる。投手起用が非常に苦しくても長嶋監督は我慢し立ち直るまでジッと待った。これはもの凄く勇気がいることで他球団は真似は出来ないだろう。ネット裏では西本投手の起用法について批判は多い。6月29日の阪神戦で藤田選手に決勝打を浴び負け投手になった西本投手だが、得たものは多いはず。つまり西本投手に一本立ちの目途がついたということだ。

こうして若い選手を頑固なまでに育てたが、一方で負けを覚悟で若手を起用した " 捨てゲーム " が話題となった。長嶋監督は捨てゲームなどないと言うが巨人OBの別所毅彦氏は「少なくとも4試合はあった。川上さんの時代も捨てゲームはあった。だが川上さんのそれは一方的な試合展開になった時の終盤だったが、長嶋君の場合は試合の序盤からベテランを引っ込めて明らかに勝ちを諦めたのが分かった。捨てゲームをしちゃイカンとは言わないがファンの人たちに分からないようにやらないと。若手だけでなくベテランも使うとかね」

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