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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 862 週間レポート 中日ドラゴンズ

2024年09月18日 | 1977 年 



タイガース?キャッツだろう
「星野っちゅう男は役者やのう」これは野球評論家の鶴岡一人氏の言葉。またこうも続ける。「阪神と試合をやっとる中日を見てるとこれが5位あたりをウロチョロしているチームやとはどうしても思えまへんなぁ」と中日が阪神をカモにしている今シーズンを代弁している。西京極球場での阪神戦も2勝1敗とまたしても勝ち越した。その代表格は虎キラーの星野投手である。「コラー、星野ええかげんにしとけッ」と虎キチの絶叫が聞こえたのか分からないがマウンド上の星野投手は声のした方向に目をやり「うん、うん」と頷いた。これを見た阪神ナインは余計にカリカリ。こうなれば戦う前に勝負アリだった。阪神は1対8で惨敗した。

星野投手はこの勝利で今シーズン9勝目。阪神からはオール完投の6勝、うち完封が2試合。セーブも2つ稼いでいる。「今年の俺は阪神さんから給料をもらっているようなもの。この分では西の方向に足を向けて寝れんゾ」とニヤリ。阪神戦は通算でも24勝11敗とお得意さんにしている。「本当はね俺はいつもビクビクして投げているんだ。今年は体調が万全ではなくスピードが出ないからさ」と自分の右太モモをさすった。肉離れを起こした右足を庇うあまり投球フォームを崩して直球の伸びを欠いているのだ。

スピード不足をスライダーやフォークボールなど変化球を駆使してしのいでいる。これが強振する打者が多い阪神打線にはかわす投球が功を奏しているのかもしれない。中日ナインは「阪神相手に仙ちゃんが投げたら勝ったも同然」とばかりノビノビとプレーして思い切りの良い好打や守備でもファインプレーを披露する。逆に阪神ナインは「中日の連中はウチとやると、どうしてあんなによく打つんだろ。ホント不思議だわ」と嘆く。人間なにが幸いするかわからないものだ。


板についてきた田尾
デービス選手が8月2日の広島戦で三村選手が放った打球を捕球した際にフェンスに激突し左手首を骨折して戦線離脱した。その穴を埋めるべく後釜に入った田尾選手がようやく板についてきた。特に最近の守備について師匠役の中コーチが「短期間であれだけこなせるようになったのは大したもの。良いセンスの持ち主だね」と舌を巻く急成長ぶり。ただしバッティングについてはもう一息といったところ。「投球から早く目を離してしまうのが欠点。顎が上がりボール球に手を出してしまう」というのがネット裏の共通した田尾評だ。

ダイヤモンドグラブ
「実は僕、ダイヤモンドグラブ賞を狙っているんですよ」と冗談を飛ばすのは対広島18回戦で13勝目をマークした鈴木孝政投手。この試合、2対2の同点で迎えた7回に広島が一死三塁と勝ち越しのピンチに鈴木孝投手は好調のライトル選手と対戦した。初球、なんとライトル選手はバントの構えをした。スクイズである。意表を突かれた鈴木孝投手は一瞬出遅れたがすぐにダッシュでマウンドを駆け下り捕球するとバックホームし、間一髪でアウトにして失点を防いだ。

「てっきり打ってくるもんだと思っていたので驚いた。ライトルがバントの構えをした時は『エッ、送りバント?』と直ぐにスクイズだと分からなかった。ビックリして出遅れたけど運良く目の前に球が転がって来たので間に合った。ちょっとでも横に行っていたら負けていたでしょうね」と振り返った。調子の良い時は何でも好転する。果たして鈴木孝投手の幸運がいつまで続くのか。ダイヤモンドグラブ賞を獲るという軽い冗談が実現するかもしれない。

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